本年も大変お世話になりました。
おかげさまで、この一年もなんとか終えることができそうです。
本年中に賜りましたご支援やご厚情に対しまして、改めて御礼申し上げますとともに、皆様がまた末広がりの幸い多い新年を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます。
ありがとうございました。
引き続き、当法人をどうぞ、どうぞよろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人なごみ
年末、私は初めてNPO法人なごやか理事長の挨拶回りに同行する機会を得た。
M事務長、グループホームジョバンニのT管理者、高齢者総合相談センターのM所長といった法人の大幹部たちに混じっての訪問はとても緊張した。
当の理事長はというと、市・県の担当課長、特養の施設長、老健の常務理事などの元を、軽い足取りで回って行く。
驚いたのは、みながみな、理事長を心から歓迎していることだった。
施設の玄関で顔を合わせるなり、手を取らんばかりにして、さあ上がって上がって、と繰り返す方もいた。
そんな厚意を浴びながら、理事長は短い挨拶でそれ以上の感謝の思いを相手に渡している。
本当に気持ちのいい光景だった。
車に乗り込むと私は率直な感想を述べた。
「理事長の行くところはみなさんいい方ばかりですね。」
理事長は笑った。
「昔、(グループホーム虔十の)Y管理者と、彼女の着任の挨拶に回った際に同じことを言われたよ。
僕はいいひとのところにしか行かないし、そうじゃないところへきみを連れては行きません、と答えたと思う。
―あれから長い月日が流れたんだなあ。」
偶然「虹の彼方に」を聴いた日はなにかいいことがある、というのが僕の秘かなジンクスだ。
レストランの自動ドアが開くとBGMでかかっていたり、小学校の参観日に行った際に校舎の屋上で子供たちがアルトリコーダーで練習していたり。
ただ、午後11時過ぎにテレビを点けたらCMで流れていても、その時刻ではもういかんともしがたいし、また、オカリナ演奏が空耳で聴こえるのもノー・カウントだ。
虹の彼方のどこかはるか高みに
遠い昔、子守唄に聞いた国がある
虹の彼方のどこか青空の下で
諦めていた夢が本当になる
いつか星に願いをかけ
雲の向こうで日覚める
全ての悩みはレモンドロツプのように溶け出し
煙突から消え去る
そしてあなたが私を見つけるの
虹の彼方のどこか青い鳥が飛ぶ
鳥たちは虹を越えて行くのに
どうして私にはできないの
幸せの青い鳥が飛ぶ虹の彼方
どうしたら私は行けるのかしら
本当にすごいジュディ・ガーランド
日曜が休みの私は部活動へ出かける子供たちに朝食を出したあと、早めに家事を片付けて家を出た。
気分転換に喫茶店アルファヴィルでコーヒーとトーストでもとろうと思ってのことだった。
最近は私もすっかり常連になっていた。
お店にはオーナーと、アルバイトのIさんがいた。
愛らしい柄の黄色いスカート姿のオーナーは大きめのツリーへ取り付けた沢山のクリスマス飾りを手際よく整えていて、それだけで一幅の絵画のようだった。
カウンター内のIさんの本職は個人医院の医療事務で、ここは土日だけのダブルワークだ。
黒や紺のTシャツに黒いジーンズを好んではいていて、理事長いわく「スパイみたい」なショートカットの女性だった。
実家の青森から届いたリンゴを使ったフレッシュジュースをその場で作ってごちそうしてくれた。
リンゴと人参をすりおろし、ミネラルウォーターで好みの濃さに整えるだけなのだが、サラサラとしたシャーベット風の食感がさわやかで、眠気が覚めるように思えた。
「そうなんです、学生時代から朝にこれを作って飲むと気分がすっきりして。人参が入った分、はちみつやミルクを入れなくても甘いでしょ?」
確かに透明のグラスをかざしてみると、中身にはほんのりと人参の赤みがついていた。
クリスマスイヴを迎える準備を終えたオーナーが店内を見渡し、満足げな表情で言った、
「Tさん、理事長さんにお会いしたら、おいしいアップルパイが焼けてますよ、とお伝えしていただけません?
こないだいらした時に、アップルパイがマイブームになっていて、あちこち買い歩いているってお話しされていたので。」
いいですよ、と答えながら私はすかさずそれを一個注文し、上司より先に味わうことにした。
私たちは三人してくすくす笑った。
気仙沼ぽらんデイサービスの仮事業所への引っ越しが完了し、翌11日から無事に通常営業を行なうことができた。
H管理者へは当初1~2日間ほど臨時休業にして引っ越し作業に充てても構わないと提案したものの、年末に利用者様や家族様にご迷惑をおかけするのは申し訳ないので、というNPO法人なごみの管理者らしい責任感に基づいた申し出があり、それではと休業日の日曜日一日で強行することに決めた。
当日は僕も午前8時半から軽トラック持参で4往復付き合った。
仮事業所がすぐ近くなのはなにより幸いだった。
第1便はイスを15脚。
2便目はソファ3台。
3便目はダイニングテーブル3台。
最後はスチール書棚やつい立て、シェルフラックなど。
簡易ベッド5台はGHぽらん気仙沼から借りた車イス積載用キャラバンで、大量のリネン類はそれぞれ職員が運転する軽の活動車で運んだ。
積みながら、下しながら、無意識のうちに備品の数量をチェックし、頭に入れている自分がいた。
事業所の開設準備を大きなルーティンワークと捉えることによって、NPO法人なごみは同業他社が驚くスピードで急展開した。
それが一段落し、もう不要なはずなのに、こうしてやってしまう。
久しぶりに貪欲な自分が顔を出しているのが、我ながらおかしかった。