「県庁からの帰り道、連日の猛暑と過密スケジュールのためか僕はハンドルを握りながら目が半分閉じかけていた。
夜の10時を回っており、暗闇と単調な高速道路はよけい眠気をそそる。
次のパーキングで仮眠しなければ。
そう思いながらも、首が前に垂れてきた。
『しっかりしなさい。』
頭の中で声がしたのであわててあたりを見渡すと、隣の車線を並走している車に、ざしき童子が乗っていた。
『ざしき童子じゃなくて、千珠でしょ?』
ああ、聞こえてしまったらしい。
暗くてよく見えないが、紺のカローラレビンだろうか。
どうやら姫様は走り屋のようだ。
二人で少し走りますか。
『いいわね。』
僕らは競ってスピードを上げ、抜きつ抜かれつ走った。
メーターパネルの青く澄んだライトに照らされたざしき童子の細おもてはいっそう白く見えた。
インターチェンジを二つほど通り過ぎたろうか、いったんスピードを落として車を並べた彼女は小さく手を上げると、再度加速し、細長いテールランプを数回振って闇に消えて行った。
眠気はすっかり覚めていた。
また危ないところを助けられてしまった。」
テレンス・スタンプとフェラーリ
(NPO法人なごやか井浦理事長)本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。毎回お話している通り、小規模多機能ホーム、グループホームは地域密着型サービスに分類されている小規模多機能ホーム、グループホームは概ね年6回、2カ月に1回、運営推進会議を開催し自治体や地域の方々にこのホームで何が行われているのか、職員はどのような思いでサービスを提供しているのかを知っていただくことが義務付けられています。この地域には当法人の3事業所が集まっており、一方では事業所合同での開催の回数が制限されていることから、毎回お誘いして申し訳ありませんが、出来る範囲でお付き合い下さい。
また、猛暑日が続いており、最高気温も記録更新している状況ですので、皆様には体調管理をして気をつけてお過ごしいただきたいと思います。
<会議(委員)からの評価、要望及び助言>
◎水害時の対応について
(小規模多機能ホームカムパネルラE管理者)先日、市と福法組が共催の防災研修へ出席した。昨年10月の台風接近時は市から連絡が入り、通い利用者を早めに帰宅させる対応をとった。その前の9月には夜間に大川増水で避難勧告等があり、水位を注意深く見守ったこともあった。大川が氾濫することなど想像できないが、近年の全国的なニュースを見ると注意が必要と感じている。
ハザードマップでは本地区は浸水地域になっており、このホームは1メートル程度の浸水予想となっている。
(民生委員)なごやかさんがここに施設を建設するだいぶ前のことだが、台風で特養吉兆苑さんの裏の土手が決壊したことがあり、おばあさんが一人流されたことがあった。この辺りがまだ田んぼの頃で、はせが全部流れた。その後も台風が来たが、川底を深く掘るなどの対応を行なったので被害は免れた。昨年の台風では、吉兆苑さんは吉運寮に避難したとのこと。車椅子の方が多いので、避難誘導が大変だったと聞いている。ここも油断はできない場所と思う。
(行政区長)この辺は岩手県から来る川と市内の川の合流地点となっているので一気に水かさが増える可能性がある。
(理事長)市と福法組の共催の防災研修では施設の避難取組事例の報告があった。参加者アンケートではとても好評で、事業所へ持ち帰りマニュアルや避難計画を見直したいという意見があった。TH大准教授の講話でも情報を収集する重要性とそれができる職員を育てていくことが大事と感じた。また、こちらのホームは老健エーデルワイスさんや吉兆苑さんと防災協定を結んでおり、いざという時はエーデルワイスさんの3階に避難してもいいというお声掛けもいただいている。二重、三重に備えてはいるが、岩手の上流でどしゃ降りの雨が降っている時は分かりにくいので気をつけていかなければならない。
(E管理者)この辺は浸水地域になっている為、避難準備情報が出されたら出来るだけ高台にある姉妹事業所へ避難するよう心がけている。夜間は川や周囲の様子が分かりにくいので注意して行動をとりたい。
(行政区長)火災についても対策はとっていると思うが、待ったなしの状況なのでその辺りもしっかりと考えておく必要がある。
(E管理者)火災訓練は日中想定、夜間想定で年2回実施している。夜間は職員が一人の為、通報、初期消火、避難誘導の確認を行っている。避難場所は傍の道路になるので、いち早くご近所には大声で知らせていくことが大事と思っている。
(理事長)遠慮しないで声を掛けることが大切だ。西日本での災害の報道は参考になることがあった。近所の方に声を掛けることであったり、エアコンの室外機が浸水して使えなくなったことであったり。室外機は直置きではなく高いところへ上げていくことも必要と感じた。施設も郡部では平屋と決まっているが、このような場合は二階があればな、と感じるところもあり、参考にしながら建物の改修も考える。
(市地域包括支援センター職員)こちらの会議に出るたびに、事業所の様子だけでなく松川や新城など地域全体の様子や地域の方々が頑張っている様子を知ることができている。先日の防災研修には出席しなかったが、後日伝達講習を受けた。
予想外の災害は起こりえると思うし、前の通りにやればいいというのではなく、これでいいのかといつも自分に問いかけることが大事と感じた。
(行政区長)災害時対策として施設ではデータのバックアップは行なっているのか。
(理事長)クラウドで管理している。当法人では管理者、CM、相談員、事務職員、それに事業所へ約50台、ノートPCを支給しているが、データはクラウドで一括管理している。大震災の教訓だ。さまざまな部分を備えていくことが大切と考えている。
1957年の映画「抱擁」は、1920年代にナイトクラブの人気歌手だったのが、店の移籍を巡るトラブルから喉を切られて歌が歌えなくなり、コメディアンに転身したジョー・E・ルイスの伝記映画で、フランク・シナトラがルイスを演じている。
劇中シナトラが歌ったサミー・カーン作詞、ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の「オール・ザ・ウエイ」は大ヒットしてその年のアカデミー主題歌賞を獲得、シナトラの代表曲の一つとなった。
ちなみに、「愛の泉(Three Coins In The Fountain)」1954年、「波も涙も暖かい(High Hopes)」(1959年)も、カーンがシナトラのために書き、それぞれアカデミー賞を受賞している。
シナトラは歌詞を表現するのがうまい、とトルーマン・カポーティが評しているが、下の歌詞・訳詞を頭に置いてこのシーンを観ていただくと、それがよくわかると思う。 相棒のピアニスト役はエディ・アルバート、「ローマの休日」でジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)の相棒のカメラマンを演じている。
オール・ザ・ウエイ
きみを愛するひとが現れたとしても
生涯きみを愛してくれなければ 無駄なことだ きみを励ましてくれるひとが必要な時 喜んできみのそばに生涯いてくれなければ
どんな高い木よりも高い
そんな感覚 深く青い海よりもさらに深い
それがもし本物なら
きみを必要とするひとが現れたとしても
生涯きみを必要としてくれなければ 無駄なことだ
豊かな時にも、貧しい時にも
どんな時でも、何が起こっても
僕らがこれからどうなるかは誰にもわからない
わかると言うのは愚か者だけだ
でも、きみを愛することを許してくれるのであれば 僕は生涯きみを愛し続ける ずっといつまでも
だから、きみを愛することを許してくれるのであれば 僕は生涯きみを愛し続ける ずっといつまでも
all the way
When somebody loves you
It's no good unless he loves you all the way
Happy to be near you
When you need someone to cheer you all the way
Taller than the tallest tree is
That's how it's got to feel
Deeper than the deep blue sea is
That's how deep it goes if it's real
When somebody needs you
It's no good unless he needs you all the way
Through the good or lean years
And for all the in-between years come what may
Who knows where the road will lead us
Only a fool would say
But if you'll let me love you
It's for sure I'm gonna love you all the way all the way
So, if you'll let me love you
It's for sure I'm gonna love you all the way all the way
今日はNPO法人なごやか理事長のお伴で物件(土地・建物)の内覧に来ていた。
小さな事業所用の物件を探していた理事長へ、出入りのOA機器販売会社の営業マンが上司の持ち物の空き家を紹介してくれたのだ。
理事長の元には不思議とこういう案件が舞い込んでくる。
本人いわく、ふだんから相手によくしていると、自然と集まってくるものさ。
現地で待ち合わせていた持ち主が言うには、昨年亡くなるまで伯母が一人で住んでいて、10年ほど前に平屋の半分のみオール電化にリフォームし、外装も新しくしたのだそう。
たしかに、玄関から左側の通し間はひどく古ぼけていて、私には廃屋の一歩手前に見えた。
三人で建物の外に出るなり、宅建資格を持っている理事長が独り言のような口調であっさりと言った。
「築60年というところでしょうか?」
彼は持ち主を振り返ると、ぜひお借りしたい、現況有姿で○○円でいかがでしょう、と早くも賃料を提示した。
建物はともかく、この広い敷地で安すぎないか、と私はあっけにとられたが、意外にも相手は二つ返事で承諾した。
商談が成立した瞬間だった。
では後日、私が必要な書類を作成して、またご連絡差し上げます、ありがとうございました。
写真一枚撮ることもなく、私たちは物件をあとにした。
もう一度見なくていいのですか?と理事長に尋ねたが、よく眺めたからもういいよ、あとで法務局で登記簿謄本は取得するけど、現況有姿でだからね、と愉快そうにしている。
「面白い物件じゃない、通し間の方は自力で直せば、子ども食堂ができるかもしれないよ。」
K市の福祉施設等運営法人組合、略して福法組の管理者会議へ参加した私は、終了した時刻が正午を大きく過ぎていたことから、会場近くの喫茶店アルファヴィルで昼食をとることにした。
あまり広くない店内はランチタイムということもあって混んでおり、唯一空いていたカウンターの端の席に着いた。
カウンターの中では細身のコックコートを優雅に着こなしたオーナーと、平日にもかかわらず、ダブルワークのアルバイトのIさんが忙しく立ち振る舞っていた。
Iさんが勤めている医院はドクターが高齢のため、長めの夏休みを設けているのだそうだ。
私の前に立った二人はいたずらっぽく目くばせすると、一緒に頷いた。
どうしたんですか?と私は身を乗り出した。
「お盆で弘前に帰省していたIさんがね、とっても美味しい食材をお土産にたくさん持って帰ってくれたの。
高梨さんがいらしたら、それを使った特製ランチセットを3人で考えましょうって話してたんですよ。」
いいですね!と私は即答した。今度の日曜日にでも早速。
二人は微笑み、じゃあ、今日は私たちの賄い食をごちそうしますね、と私の目の前に、塩むすびと、冷たいお茶、それにしじみ汁を並べた。
デュラレックス・ピカルディに注がれた小さな氷入りのお茶を一口飲んだ私はその味に驚いた。
これはなんですか?
「玄米茶より香ばしくて、おせんべいを食べているみたいでしょ?
青森県産の『青天の霹靂』という新しい品種のお米から作られた、コラボ商品の米茶なの。
この、オーナーが握ってくださった塩むすびも、『青天の霹靂』よ。
これから考案する当店のランチは、『青天の霹靂』セットにしたいなあって考えてるんです。ウケると思いません?」