ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

私がデイサービスを開設する日⑧

2017年04月28日 | なごやか

 やまねこデイサービスの事務室で管理者から来月の稼働率の目標に関して報告を受けていた理事長は、玄関から大きな音を立てて飛び込んできた私の顔を少し驚いた表情で見た。
私は思いつくまま、順番もめちゃくちゃに、デイサービス開設の経緯と準備について、理事長へ立ったまま話した。
まあ、掛けるといい。イスを指し示された。
事業所の名前はなんてつけたの?
「おかげさまデイサービスです。」言葉が喉にからまった。
あはは、ひどいな、と彼は楽しそうに笑った後、すぐに真顔に戻った。
きみのセンスじゃないね。
質感を大切にしよう、と繰り返し教えてきたはずだから。
                                 
  フェイルセイフって言葉を知っているかい?
理事長は言った。
米ソの冷戦時代、核兵器の誤使用から生じる偶発的な戦争開始を防止するためにとられている安全対策、システムの呼び名が転じて、核爆弾を積んだ爆撃機の帰還可能地点をフェイルセイフと呼んだんだ。
きみはウチの職員たちに転職を持ちかけ、自分のなけなしの貯金をはたき、県には新しい事業所の管理者になると認識されている。
きみはいわばフェイルセイフをすでに大きく越えてしまっているわけだから、もう細かいことには目をつぶってでも、あるいは、さらに追加の犠牲を払うことになっても、前に進むしか選択肢はないと思うな。

  何が、どのへんが不安なの?
私は先ほど話したことをもう一度すべて繰り返した。
理事長はそれに一つ一つ丁寧に答えてくれた。
私は一体これまでNPO法人なごやかで何を見てきたのか。
答えはすべて日常の中にあった。
考えてみれば、この対話も日常の風景だった。
                                             (つづく)

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「ジャッキー」

2017年04月24日 | ハリウッド

  ロードショー公開された「ジャッキー ファーストレディ最後の使命」を観た。
大統領暗殺事件に遭遇したファーストレディが、その葬儀を取り仕切って夫の生涯を伝説・神話にまで昇華させるという難事業を苦しみながら遂行する4日間を描いている。
  興味深かったのは、ケネディ神話の中でもとりわけ有名な場面がなかったことだ。
やはり、これ(演出なのか、だとしたら幼いジュニアへどのように指示したのか)は最大のタブーなのかと改めて感じた。
下は実際の映像だ。






 主演のやせて小柄なナタリー・ポートマンはジャッキーというよりは妹リー・ラジヴィル似だなと思った。先日亡くなった名優ジョン・ハートも出演している。















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アイ・ラブ・パリ

2017年04月21日 | favorite songs

I Love Paris

I love Paris in the springtime
I love Paris in the fall
I love Paris in the winter
When it drizzles
I love Paris in the summer
When it sizzles

I love Paris every moment
Every moment of the year
I love Paris
Why oh why do I love Paris
Because my love is here


春のパリが好きだ
秋のパリが好きだ
小雨降る冬のパリが好きだ
焼けるように暑い夏のパリが好きだ

いつでもパリが好きだ
一年中のパリが好きだ
なぜパリがこんなにも好きかって
だって恋人がいるからさ






  コール・ポーターがミュージカル「カンカン」のために書いた曲。
無数のアーティストがカバーしているが、映画化された際に主演したフランク・シナトラが歌ったバージョンは際立ってゴージャスかつリズミカルだ。
オードリー・ヘプバーン主演の映画「パリで一緒に」の原題「Paris When It Sizzles」はこの曲の歌詞にちなんでいる。

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 私がデイサービスを開設する日⑦

2017年04月17日 | なごやか

  既存建物をデイサービスに改装する工事は遅々として進んでいなかった。
夫とその親友Mは素人なので、工事業者からいいようにされているのかもしれない。
当座の費用にと出し合った資金はもう底を尽きかけているとのことだったし、Mが担当の銀行融資も可否すらまだ出ていない。
やまねこデイサービスの業務につきながら、私の頭の中はこれら懸案事項でいっぱいになりつつあった。

  休日、改装現場へ行ってみて、驚いた。
便器は多機能のハイグレードのものだし、梱包されたままのテーブルセットは見るからに高価そうで、私なら絶対に買わないような品物だった。
さらに、外にはピカピカの車イス積載車が停まっていた。
嫌な予感がして夫に尋ねると、なかなか高かったよ、とあっさり答える。
リースやローンにしなかったのか、と重ねて尋ねたところ、言葉に詰まってぷいと横を向いてしまった。

  数日後、新しい事業所の指定申請を担当しているKから、書類を書き上げたので県への提出に同行してくれないか、と連絡があった。
私は管理者予定者の義務感から、了承した。
  県の担当者は窓口のテーブル越しにレントゲンのような視線で私たちの顔を交互に見ながら言った。
書類には雇用契約書の写しも必要ですが、開所予定日までにあなた方がそれぞれ退職されることを、現在の事業主さんたちには話しているのですよね?
私は返事をしなかった。
担当者も答えを期待していなかったかのように、書類に目を落とした。
  申請書類はあっという間に訂正のペンで真っ赤になって行った。
私は思った、なごやかの理事長がよく言ってたっけ、指定申請書類は特殊なので書ける者はあまりいない、その書類をルーティンワークと捉え、一発で、訂正なしで通るように書きたい、またそれが相手へのマナーだと思っている、と。
そして何名かの職員に実際に作成方法を教え、書かせてもいた。
握った手のひらが汗ばんでくるのを感じた。
  やっと訂正が終わった。
担当者はトントンと書類を机の上で整えると、私たちの前へ静かに押し戻した。
私はとても恥ずかしかった。
提出のレベルに達していないと思われているのは明白だった。
庁舎を出ると、口の中でなにか言い訳を続けているKを振り払うようにして自分の車に乗った私は、まっすぐやまねこデイサービスへ向かった。
                                                                               (つづく)


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本気

2017年04月14日 | 日記
 息子の入学式のお衣裳を決めてくれ、と家人に言われて久しぶりに本気を出しました。
サイズが父親より一回り弱小さいのですが、お下がりと新品を組み合わせています。
ブルックスブラザーズのネイビージャケットに、スキャッティオークの白いボタンダウンシャツ、ジバンシーの赤☓ゴールドの太いレジメンタルタイ、グレンチェック柄のスーツをオーダーしてそのパンツ、コールハーンの茶のストレートチップ。
全部着せてみたら、顔をのぞけば往年の共和党政権下のホワイトハウス研修生、といった良い雰囲気でした。


                     





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