最後の最後、家族を代表して花婿側の父親が参列者への謝辞を述べる。
その中に、大切な娘を嫁がせる花嫁側の父親への感謝の言葉がないことだ。
これは風潮なのかもしれないが、以前は当たり前のようにあった。
男女共同参画社会だからとはいえ、なくなってもいいものなのだろうか。
仕事柄、年に何回か披露宴へ招かれることがあり、それも大半は花嫁側=嫁がせる、送り出す方なので、どうしても花嫁の父への配慮を求めてしまうのかもしれない。
携えて行く祝辞も、大切にしてほしい、大切にされて欲しい、という哀願調になりがちだ。
先日参列した非常に盛大な披露宴でも、最後に花婿の父親が話したことといえば、自社の工場落成のことと、一流の式場スタッフへのねぎらいだった。
花嫁側の思いなど、頭の片隅にもなかったのだろう。
僕は想定していた寿命をすでに20年以上も過ぎてしまっているけれど、娘の結婚式まで生き長らえて、いや、「ハムレット」の父王のように亡霊になってでも、相手方の感謝の言葉を確認してやる、とこれを機に強く思った。
一年の半分以上はクレリックシャツを着ている。
たぶん死んだら、あんなに好んで着ていたのだから、と死装束の代わりに着せられてしまうかもしれない。
クレリックシャツは和製英語で、正式にはカラーセパレーテッドシャツ、ホワイトカラードシャツと呼ぶけれど、そんなことに目くじら立てなくても、と思ったりする。
ラウンドカラーのクレリックシャツにレジメンタル・ストライプのボウ・タイを締め、ネイビーブルーのブレザーを羽織れば、気分はすっかりニック・キャラウエイ(「華麗なるギャツビー」の語り手)だ。
マイケル・ダグラスがアカデミー主演男優賞を獲得した「ウオール街」(1987年)は、彼が演じた成り上がりの冷酷な投資家ゴードン・ゲッコーのキャラクターとファッションが実際にウオール街で働く証券マンたちにまで多大な影響を与えた。
「華麗なるギャツビー」とは違った系統の、クレリックシャツがたくさん登場する映画である。
手元に届く職員の資格者証の写しが増え過ぎて、本部事務局のHさんに整理を依頼した。
あまりに膨大な量なので、そのまま渡すのが申し訳なく、とりあえず在職者と退職者だけは何とか自分で仕分けた。
こちらの山が退職者で、こちらが在職者、後者のみを事業所別に仕切りをつけてファイルし直してください、と手渡すと、とにかく真面目なHさんが言い放った。
「退職者のものはすべてシュレッダーにかけていいのですね?」
あ、Hさん、そんな大きな声でストレートに言わないで、ホラ、みんな見てるよ。
まあ、そうなんですが、こちらの3名の方については、法人にとって大切な功労者なので、手をつけず、永久保存としてください。
10日ほどして、ファイルが出来上がってきた。
パラパラめくってみると、巻末に「功労者」と記された仕切りが設けられ、その方々の資料が丁寧に綴じられていた。ありがとう!Hさん、やってくれましたね!
映画史上最大の傑作と称される「市民ケーン」(1941年)はどのシーンもセリフも忘れ難いが、仕事上でちょくちょく思い出すセリフがある。
ニューヨークで新聞発行部数トップに立った「インクワイアラー」紙の記念パーティ。
社主のケーン(オーソン・ウエルズ)はかつて自分たちのはるか前を走っていた「クロニクル」紙の記者たちをまるごと引き抜くという荒業に出た。
その出来事と、それまでの6年間の時の流れをほんの1分足らずで観せてしまうトリッキーな映像のアイディアは、何度観ても驚きだし飽きることがない。
そのあとの、パーティの喧騒の中での、ケーンの右腕二人の会話―。
バーンステイン「どうかしたんですか?」
リーランド 「なあ、バーンステイン、この連中は、今は『インクワイアラー』にいるが、昨日までは『クロニクル』に勤めていたんだよな。バーンステイン、彼らは『クロニクル』で働いてきた。『クロニクル』のポリシーに従ってきたんだよな。これからわが社のポリシーに従えるかな?」
バーンステイン「大丈夫、彼らも同じ人間です。ちゃんと働きますよ。ただ優秀ってだけのことです。」
リーランド 「我々が『クロニクル』と同じ方向に進むのか、バーンステイン?」
バーンステイン「もちろん、違いますって。ケーン社主が、一週間で連中を彼好みの新聞屋に変えてしまうでしょうよ。」
リーランド 「その逆もありうるぜ、気づかないうちに。」
なごみも気をつけないと。
「リンゴの唄」
サトウハチロー作詞・万城目正作曲
赤いリンゴに 口びるよせて
だまってみている 青い空
リンゴはなんにも いわないけれど
リンゴの気持は よくわかる
リンゴ可愛(かわ)いや可愛いやリンゴ
あの娘(こ)よい子だ 気立てのよい娘
リンゴによく似た かわいい娘
どなたが言ったか うれしいうわさ
かるいクシャミも とんで出る
リンゴ可愛いや可愛いやリンゴ
朝のあいさつ 夕べの別れ
いとしいリンゴに ささやけば
言葉は出さずに 小くびをまげて
あすもまたネと 夢見顔
リンゴ可愛いや可愛いやリンゴ
歌いましょうか リンゴの歌を
二人で歌えば なおたのし
みんなで歌えば なおなおうれし
リンゴの気持を 伝えよか
リンゴ可愛いや可愛いやリンゴ
新しいホームだとばかり思っていたグループホームポラーノが4周年と聞き、驚きました。
仕事にかまけて子育てにタッチせずに来た父親が、子供の成長ぶりに慌ててしまうのと似たような感覚かもしれません。
記念のお茶会は、姉妹事業所のO管理者(GHポラーノの杜)やT介護主任(ぽらんデイサービス)も飛び入り参加して、手作りのきなこ餅やイチゴ八ッ橋に舌鼓を打っています。
利用者様と楽しそうに「リンゴの唄」を歌うY管理者の横顔は、まるでこの歌詞そのままだな、と思いました。