年末はデイサービスの利用者様へ一年間のご利用に対してのお礼と感謝の気持ちを改めてお伝えするのが習慣だ。
みなさん毎日いらっしゃるわけのではないので、二日続けて、訪問する。
午前中から官庁や他法人の事業所を回り、午後3時前にぽらんデイサービスに着いた。
ここは大所帯で、声を張り上げないと広いホールの全員には伝わらない。
さあ話すぞ、と大きく息を吸ったところに最前列の利用者様から声を掛けられた。
「シャチョーさん、素敵なネクタイだね。」
え、と思った。
実はそのネクタイは僕にとっていわゆる勝負ネクタイだった。
(ただし、官庁を回るから着けているのではなく、別に理由があるのだが、それは長くなるのでここには書かない。)
かろうじて、ああ、○○さん、お目が高いですね、と返答したが、内心驚いていた。
認知症高齢者グループホームを始めて間もないころ、派手好きの女性利用者様にネクタイを褒められたことがあった。
気分屋で職員たちの手を焼かせることが多々あった彼女とのコミュニケーションの一環として、以来、僕は意識して赤系のネクタイを多く締めるようになり、彼女が亡くなった後も、それが続いている。
時々、その方の声が聞こえる。
「あらあ、シャチョーさん、素敵なネクタイねえ。」
翌日、営業最終日の午後、ぽらん気仙沼デイサービスを訪ねた。
「ズンドコ体操」を一緒に踊り、利用者様みなさんの前で丁寧に頭を下げて退出しようとしたところ、最後列に座っていた方が僕に目を合わせ、自身のみぞおちのあたりを何度も指差している。
ネクタイ、いいね、と言っているのだ。
昨日のものではなかったが、やはり自慢の品だった。
みなさん本当によく見てらして、その目はごまかせない。
僕自身はいつもそう頭に置いて誠実に対応しているつもりだが、法人も、事業所も、より一層気をつけようと改めて強く思った出来事だった。