「風と共に去りぬ」(1939年)でスカーレット・オハラの父ジェラルドを演じたアクの強い中年男優トーマス・ミッチェルが、この年フランク・キャプラ監督の代表作「スミス都へ行く」、ジョン・フォード監督の「駅馬車」(アカデミー助演男優賞を獲得)、ハワード・ホークス監督の「コンドル」、それに「ノートルダムの傴僂男」へ出演して大忙しだったことは以前書いた。
「風」については、もう一つ書いておきたい。
それは、ミッチェル以外にも、「ジョン・フォード一座(ジョン・フォード・ストック・カンパニー)」と呼ばれるフォード作品の常連俳優たちが多数出演していることだ。
まず、北軍将校役で一座の番頭格のワード・ボンド。
それから、翌年の名作「怒りの葡萄」でヘンリー・フォンダの母親役を演じてアカデミー助演女優賞に輝いたジェーン・ダーウェルが、ピティ・パット伯母さんの友人役。
さらに、アトランタ炎上シーンでクラーク・ゲーブルの代役として馬車を操った元ロデオ・チャンピオンのヤキマ・カナットは、「駅馬車」のスタントを担当していることでその名前が広く知られているのだが、面白いことに彼は馬車に乗ったスカーレットを襲う薄汚れた北部人役で、作品中に再登場している。
彼らはオーディションがあったのだろうか。
いずれにせよ、ゲーブルとともにぬっと玄関ドアから顔を出しているひげ面のワード・ボンドの写真を見るたび、ぷっと笑ってしまう。
右は撃たれたアシュレ・ウィルクス(レスリー・ハワード)。「ピグマリオン」のヘンリー・ヒギンズ教授役の方が似合ってる、と後年思った。
ワード・ボンド。
ジェーン・ダーウェル
ヤキマ・カナット
トーマス・ミッチェル
「駅馬車」の翌年にフォードがユージン・オニールの海洋劇を映画化した「果てなき航路」より。左からトーマス・ミッチェル、ジョン・クオーレン、ジョン・ウエイン、イアン・ハンター、ワード・ボンド、ジャック・ペニック、バリー・フィッツジェラルドと、フォード・ストック・カンパニー総出演だ。
キャプラの「素晴らしき哉!人生」(1946年)より。左から2人目、アコーディオンを持った主人公の幼なじみの警官がワード・ボンド。右から3人目、大切なお金を紛失するトンマな伯父さんが、トーマス・ミッチェルだ。