自分のネクタイの中で一番多いのは、ランバンのものだ。
その理由を思い返してみると、実に単純でわかりやすい。
中学の頃にテレビで観た「あの胸にもう一度」(1968年)で、ヒロイン役のマリアンヌ・フェイスフルの衣裳をランバンがデザインしたと知ったから。
もちろん、十代で高価なブランド物を買えるはずもなく、就職してサラリーをいただくようになってから、身に着け始めたのだが。
大学時代のある日、音楽好きのグループで話していたら、隣の席から「マリアンヌの衣裳がとてもかわいくって、あれランバンなのよね」と聞こえてきた。
誰が言ったのだろう、と声がした方へ首を伸ばすと、偶然くるりと振り向いたその女の子は、僕の表情を見て、あなたも知ってるの?という顔をした。
ジッパーの丸い引手やベルトバックルが可愛らしい。よく見ると、胸元がリブの別素材になっている。
モヘア二ットのセーターはジッパーがついている。
今となってはどこが出処なのか不明なのだが、十代の頃、「ボタンダウン・シャツはカジュアルなので金属=カフスボタンやネクタイバーはつけない」と読んで、なるほどな、と妙に納得、以来一度もつけたことがない。というか、ビジネス・シーンではボタンダウン・シャツを着ないので、元々セーフだ。
こちらの出処ははっきりしている。
ジョン・F・ケネディ大統領が、公務では一度も着なかったとされているから。
その理由は二説あり、アイビー・リーガー(ハーバード大卒)のケネディはボタンダウン・シャツ(ポロカラー・シャツ)を好んで着ていたが、有権者からエリートだと反感を買うことを恐れたからだという説と、カジュアルなボタンダウン・シャツを公務で着ることは、マナー違反と考えていたからだという説だ。
最近の話題で、ロバート・ケネディJrを厚生長官に承認しないようにと上院議員たちへ従妹のプリンセス・キャロライン・ケネディ元駐日大使(のちにハーバード大と統合する名門女子大のラドクリフ大卒)が書簡を送っているそうだが、公聴会で熱弁するロバートJr(ハーバード大卒)はしっかりボタンダウン・シャツを着ていた。レガシーを大事にしないで、ダメでしょう。
プリンセスから「プレデター(捕食者)」呼ばわりされているそう。マリファナ所持で逮捕歴あり。