天津風(あまつかぜ) 雲の通ひ路(かよひじ)吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ
僧正遍照 「古今集」
[訳] 空を吹く風よ、天女が帰っていく雲の中の通り道を吹き閉ざしてしまえ。あの美しい乙女の舞い姿を、もうしばらく地上に留めておきたいのだ。
NPO法人なごやか本部へ届け物にやってきたところ、理事長が玄関に立って深々と頭を下げている。
相手はミス・エイスワンダーだった。
理事長とともに各地を転戦し、法人をここまで育てた方。
車が見えなくなるまで手を振った理事長は、やがて前掲の和歌をそらんじた。
後ろに控えていた私は、これが彼の言う独座観念というものなのだな、と粛然たる思いがした。
理由は不明だが、僕はざしき童子をひどく怒らせたらしく、平謝りに謝っていた。
根負けしたのか彼女が厳しい表情を少しだけ崩した一瞬を、僕は見逃さなかった。
「なにかお詫びのしるしを差し上げたい。」
本心だった。
じゃあ、フルコース・ディナーをごちそうしてくれない?
フルコース、、ですか、と二回繰り返してしまった。
プリフィックス(メインディッシュ等を数種類から選べるスタイル)ではなくて?
そう、フルコース。
お肉とお魚をどちらも食べたいの。
彼女の眼には時々見る挑戦的な輝きが宿っていた。
どうやら僕が肉を食べないのを知っていて、いわば罰ゲームを課す気らしい。
わかりました、と夢の中の僕はうなだれていた。
当日。
僕は映画「グッドフェローズ」のレイ・リオッタばりに給仕長へたっぷりチップをつかませた。
広い個室の重厚なテーブルをはさんで向かい合ったざしき童子は、訳知り顔の給仕長がうやうやしく僕の前に置いた二皿目の魚料理を一べつすると、苦笑いして言った。
「あなたズルいひとねえ。」
「組合長の社会福祉法人千優会、NPO法人なごやかの井浦です。
本日は新年度のなにかとご多用の中、本組合恒例の名刺交換会にお集まりいただき、大変ありがとうございます。
今夜はおもに昇進された方、異動された方がお越しいただいていると思いますが、新しいことに取り組む不安を希望とやりがいに変え、情熱を持って業務にあたってくださること、それによりお一人お一人が本来持てる力をいかんなく発揮して下さることを、切に願っております。
私自身も、皆様方の英知をお借りしながら、引き続き職務に当たってまいります。
以前も申し上げましたが、組合長職を拝命しましてからのこの一年間、私なりに心掛けてきたのは、2つの事柄です。
まず、県・市と本組合との良好な関係作り。
現在、その関係はこれまでで最も緊密であると思っています。
もう一つはわれわれ介護サービス事業者の一層の地位の向上です。
本組合が市・県の福祉行政において重要な役割を果たすことで、改めて、われわれがなくてはならない存在であるとの認識を相手方に持っていただくこと。
われわれ事業者はこの福法組というチャンネルをもってして、復興の途上にある郷土に対し貢献して行かねばならないと、私はこれまでも、そしてこれからも、考えています。
役員・組合員の皆様方におかれましては、どうぞその点につきましても、引き続きご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
「11年前の3月末、法人事務局を置いていたグループホームカムパネルラへいつものように出勤すると、玄関に見慣れない茶のショートブーツがあった。
利用者様が靴を履く際に使うベンチの下にきちんと揃えられていて、どなたか家族様がいらしているのかな、とホールをのぞいたところ、翌月からグループホーム虔十の管理者に着任する予定のYさんが、食堂テーブルの脇にしゃがんで目線を低くしたうえで、利用者様のお話に耳を傾けていた。
重い認知症で、ここがどこなのかはおろか、自分が誰なのかも半ばわからなくなり、暴言を吐くこともしばしばだった男性利用者K様が、彼女へなにかを切々と訴えている。
その光景を目にして、僕は思った、これからの日々はまるで違ったものになるだろう、と。
あの時、胸に湧いた暖かい感情はなかなか忘れられるものじゃない。
僕の視線に気づいたYさんは照れくさそうに立ち上がるとK様に一礼して、その場を離れた。
僕たちは事務室で翌月からのことを熱心に打ち合わせた。
そこから僕は、一日千秋の思いで彼女の初出勤の日を待っていた。」
「御料車について
御料車は、天皇皇后両陛下がご乗用になる車両で、皇室専用の皇ナンバーのものと品川ナンバーのものがあります。国会開会式など公的なお出ましには皇ナンバー、その他のお出ましには品川ナンバーをお使いになることが通例です。
平成18年から導入したセンチュリーロイヤルは、陪乗席を備えた8人乗りの大型車であり、国会開会式、全国戦没者追悼式及び国賓接遇などに限定的にご使用になっています。」
宮内庁HPより
ニュース映像などで時々お見かけする品川ナンバーの御料車が末広がりのキリ番なのは、たまたまでしょうか、それとも、国歌にちなまれているのでしょうか。
http://www.news24.jp/articles/2019/04/12/07428210.html