自然の中で植物を観察をしていますと、色々と教えてくれるものです。
たとえば、今では常識になってきましたが擦り傷位の軽い怪我の場合、毎日、消毒薬を使って患部を乾燥させる事はしなくなりました。皮膚表面には、常在菌が居て、それが共存する事で色々と有益な事をしてくれます。消毒を完璧なまでにしようとしますと、逆に傷の治りが悪くなります。
農地でもそうです。必死になって、色々な虫を完全に無くしたい、農作物以外の植物(雑草)を無くしたいと言う欲望の為に農薬が発達していきました。が、自然のバランスを保って居ますと一部だけの細菌や虫、鳥が大量に住み着くことはありません。雑草?もそうです。
農地も、人間の皮膚も、完全な無菌状態にしようとするとおかしくなります。
漢方治療を考えておりましたら、「はっ」とする言葉が脳裏に浮かびました。
「漢方薬は、体の邪(じゃ)を洗い流す事、蕩條(←艸冠が尽きます。「とうじょう」と読みます)が湯液治療の目的です」
つまり、自然のものを使っているから漢方で安全と言うのは間違いで、ビタミン剤でもこの理に適っていれば良いのです。しかしながら、漢方薬といえども必要以上に入れすぎたりすれば、もちろん、負担になり逆に体内に凝り固まってしまうかもしれません。メタボは、この状態かもしれませんね。
農作業を炎天下でしておりますと、脱汗に近い汗をかきます。農作業で一番に気をつけなければならないことは、脱水状態です。ウーロン茶や水道水を飲みますと、一応、喉の渇きはとれます。実は、先日、貴重な体験をしました。
それは、野生に近い状態で私の薬草園にイチゴと桑の実が実って居まして、それを口にしてみました。
そうしますと、甘酸っぱい味が喉を通り、全身を潤していく感じがしたのです。もちろん喉の渇きも取れたのですが、イチゴと桑の実が体の汚れを洗い流してくれた気がしました。
単に、水道水やミネラルウォーターを飲んだ時とは、明らかに違うのです。
畑で野生児みたいに育った植物を食べた時、体が違う感じがします。口に入れた瞬間に体が喜び、そして体全体の汚れを洗い流してくれる感覚です。
海が見える素敵なロケーションで、自然の全てが人間の五感を通して汚れを洗い流す感性です。
目からは雄大な海と澄み切った空、耳からは季節季節で薬草園を訪れる鳥や虫たちの声と木々を通って揺らす葉の音、鼻からは花達や緑の匂いが、口から植物などの山の幸と海の幸(私の薬草園から海にも川にも数分の距離です)、手や足からも自然のエネルギーを感じます。
これらが私たちの心身の汚れを洗い流してくれる漢方の極意を教えてくれている気がしました。
食べ物や薬を口にするとき、これは、体をきれいに汚れを洗い流すのか、それとも体に汚れを溜めていくのか確認をしながら行う必要があると思います。
これが漢方、東洋医学の極意かと思います。