映画『鍵泥棒のメソッド』(12年)をVDで見ていてハッとした。こういう大事さを忘れていたなあ。
冒頭から確かな脚本と演技で引きつけられ最後まで緊張感失わず笑って見た。真面目で事務能力抜群の凄腕の殺し屋(香川照之)と、計画性皆無の売れない俳優(堺雅人)の入れ替わり、どんでん返し、爽やかなエンディング。だが、波風立男氏はそれとは違う一点に強く心を動かされたのであった。殺し屋香川(映画ではコンドウ)の几帳面な楷書の文字と緻密に整理されたノートだ。うーむ、美しい。こういう日常整理の仕方を俺はしたかったのではないだろうか、なあんて。
4月から書き始めた走り書きの忘備録(1日分の計画と出来事のメモ)を全て破棄して書き直した。「えっ、あの映画で、そこんとこなの」と横目で見ていたママヨさん。そこんとこなんですよ僕って。このぐらいですっきりできるのだから、全面的『老前整理』できたら生前整理に変化しても悔いはないと確信した。未だ3日目だが、会合の出欠連絡や、買い物メモも楷書で丁寧に書くようになった。忙しさの間に合わせでなく、ゆとりの丁寧さを楽しみたい。成果主義のデジタル世界をようやく退出し、やっと風味絶佳のアナログ世界に入ることができたのだから。
■映画『鍵泥棒のメソッド』予告編
書き文字については、金曜夜のTVドラマ「つばき文具店」で考えさせられていることも大きい。先週は『おもじ』に泣く美女の話だった。美しくなくとも丁寧で読みやすい文字を書きたい。同時進行で、丁寧で波風氏しか書けない文字(文字の形を借りた絵ですね)も書いていきたい。 ※「美文字」に対する「汚文字」