電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

デュマ『モンテ・クリスト伯』第1部を読んでいます(2)

2006年09月21日 06時30分01秒 | -外国文学
ナポレオン時代にジロンド党員として活躍し、議会において元老院議員として有名だったノワルティエ氏を父に持つヴィルフォールは、王政復古の反動の時代に、頑固な王朝派のサン・メラン侯爵の娘と結婚します。その際に、サン・メラン侯爵夫人から、父の経歴を理由に、王党派としての忠誠を誓わされます。保守反動の時代に自分の将来を築けるかどうかがかかっていたそのとき、エドモン・ダンテスなる青年は、ナポレオンから父へあてた手紙を仲介した生き証人だったのでした。高名な政治家の息子が、同様に信頼できるとは限らないのですね。ダンテスが長く幽閉されることとなった理由は、実にここにあったのですから。そして、峻厳な検事の論告の話におびえる婚約者ルネとヴィルフォールとの会話は、ルネが死去し、一人残された娘が重要な役割を果たすことになる、実に重要な伏線になっているのでした。

19歳の将来ある若者(ダンテス)を救おうとする雇い主モレル氏の奔走、父親の息子の無実への信頼、メルセデスの悲嘆が描かれます。歩みは遅いですが、堂々たる物語の序章は次第に加速されてくるようです。
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