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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

これは、藤沢周平お気に入りの一節だったのか

2010年10月30日 06時01分59秒 | -藤沢周平
お気に入りの本を、何度も読み返す楽しみというのがあります。たとえば藤沢周平『用心棒日月抄』シリーズ。すでに記事にしております(*1)ので、気楽に読むことに専念できます。すると、物語のすじとは別の意外なところで発見があったりします。たとえば「娘が消えた」の章。行方不明となった娘を探して、盲目の師匠のところに尋ね行き、娘が若い職人と相思相愛の関係になっていたことを知る場面です。

「それがおようをひと眼みて、惚れこみました。あの子も同様でございました。古い隆達節に、生るるも育ちも知らぬ人の子を、いとおしいは何の因果ぞの、などと唱っておりますが、二人はそのようでござりましたな」

この一節は、『蝉しぐれ』でも「染川町」の章で登場します。今は藩主の側妾となった隣家の娘の話を、文四郎がはじめてもらしますが、これに対して

生まるるも育ちも知らぬ人の子を いとおしいは何の因果ぞ

与之助にこんな俗謡を口ずさむ場面を与えています(*2)。
おそらく、藤沢周平お気に入りの一節だったのではないかと思います。

(*1):藤沢周平『用心棒日月抄』を読む~「電網郊外散歩道」2007年5月
(*2):いい文章だなあ~藤沢周平『蝉しぐれ』より~「電網郊外散歩道」2009年10月
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