電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ドラマ「作家・藤沢周平・父の一言~ふつうが一番」を観る

2016年07月12日 06時05分56秒 | -藤沢周平
新聞の番組欄を見ることは少ないのですが、たまたま予告紹介記事で目についたドラマ「作家・藤沢周平・父の一言~ふつうが一番」を観ました。
赤ん坊の娘を置いて妻が早逝した後、父・小菅留治が娘の展子チャンを育てる奮闘が「幼稚園の手提げ袋事件」で描かれます。小菅留治役は、映画「山桜」(*1)で寡黙な武士・手塚弥一郎役を演じた東山紀之、同居するしっかり者の母親役に草笛光子。小菅留治氏の求婚のエピソードは、なんだかユーモラスです。妻となる和子さん役は、「良家の子女のたしなみ」で空を飛んだりする(*2)松たか子さん。結婚生活も、子どもとバアちゃんまで一緒なのですから、なかなか一筋縄ではいきません。子役がとても上手なので、学芸会風にはならなくて良かった(^o^)/

その子役が急に大きくなって、しかも急に反抗期になったのにはビックリしましたが、バアちゃんの諭し方が実にうまいのに感心しました。これは、たぶんあのバアちゃんの年代の人が脚本を書いたか、あるいは演出をしているのではなかろうか(^o^)/
酔っ払って山師の親戚を自宅に連れ帰って来たりするあたりはお笑いの要素ですが、酔っ払って若い女房に逃げられたと泣く松チャンを「ふつうが一番」と説教するあたりは、脚本家が考えた人情ドラマの設定でしょう。
奥さんの和子さんが倒れたときは、おそらく「また妻を病気で失うことになるのか」と恐れたためでしょうか、背負って担ぎ込んだ医院で看病を受け、助かります。こういう夫婦の助け合いを描くばかりではウソっぽくなると思ったのでしょうか、その後は直木賞の候補作にノミネートされ、『暗殺の年輪』で受賞するあたりのハラハラドキドキが、夫婦喧嘩の真っ最中に電話が来る設定で描かれます。で、夫婦喧嘩はおしまい。そりゃそうですね~(^o^)/



たしか、作者は『暗殺の年輪』で直木賞を受賞することをあまり喜ばなかった(*3)のではなかったか。それを編集者にたしなめられた経験を、何かのエッセイで書き残していたように記憶していますが、このドラマの中では、単純化のためにいさぎよくカットされています。このあたりの塩梅が、よくできています。現代風に笑いのツボをおさえた、でもしっとりした味のある、いいドラマでした。小道具や家の中の様子等、昭和のテイストが感じられて懐かしく思いました。直木賞の選考結果が黒電話で知らされるまでのやきもき等、これが現代の携帯電話なら、ドラマになりにくいですからね~(^o^)/

調べて見たら、プロデューサーが石井ふく子、脚本は「蝉しぐれ」をドラマ化(*4)し映画化(*5)した黒土三男、演出は清弘誠、制作はTBS。これは、たぶんそのうちに再放送があるのではないかと思います。

(*1):映画「山桜」を観る~「電網郊外散歩道」2008年5月
(*2):お正月に映画「K-20 怪人二十面相・伝」を観る~「電網郊外散歩道」2009年1月
(*3):『暗殺の年輪』と『蝉しぐれ』~両親の造型などから~「電網郊外散歩道」2009年10月
(*4):NHKの金曜時代劇「蝉しぐれ」の脚本はやはりすぐれていた~「電網郊外散歩道」2014年2月
(*5):『蝉しぐれ』、あらためて原作の厚みを思う~「電網郊外散歩道」2005年10月

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