危うくダブルブッキングになるところを、急遽、土曜の夜に変更してもらった山形交響楽団の第266回定期演奏会は、たいへん充実した音楽体験でした。今回のプログラムは、
というものです。18時30分から、恒例のプレコンサートが開かれたのですが、今回はいつもと趣向が違いました。なんと、客演を含む山響金管奏者と吹奏楽部の女子高生の計11人による合同演奏だったのです。
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なんでも、東北電力の後援により2月に開催された「ブラスパルコンサート」参加者の中から、土曜が山形城北女子高校、日曜が寒河江高校と東桜学館高校の吹奏楽部員が出演するそうで、今回の曲目はジョヴァンニ・ガブリエリの「ピアノとフォルテのソナタ」から。ガブリエリらしい華やかさのあるきれいな音が出ていて、とてもよかった。こういうサプライズは、まさに企画の勝利!という感じです(^o^)/
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次いで、開演前のプレトークは、西濱事務局長と広上淳一さんです。例によって着替え前のラフな格好で、実に自然体の広上さんが「カーリング女子の試合の話題」から始めます。演奏会があってカーリング女子の試合が見られないのが残念そうでした。そだねー(^o^)/
広上さんは、山響に客演するのは八年ぶりということですが、前回(*1)のホールは山形県民会館だったか。
西濱事務局長は、サプライズで特別ゲストをステージに呼び入れます。なんと、音楽監督の飯森範親さんでした。飯森さんは、広上さんの指揮する演奏を聴きたいと足を運んだとのことでしたが、実は息子さんと蔵王にスキーに来ているらしいです(^o^)/
広上さんは、2004年からもう14年になる飯森さんと山響との関係を、「山響と山形への愛」と讃えます。確かに、飯森さんが山響の常任指揮者に就任した2004年の定期演奏会、あのバルトークの「管弦楽のための協奏曲」の記憶は鮮烈です。その後の歩みと実りは、山響というオーケストラが「あすなろ」の時代を脱し、大樹へと成長する過程にほかなりません。外から見える広上さんの目には、きっと「地方オーケストラが作り出す活力ある文化の時代」が見えているのでしょう。
演奏会が始まると、第1曲めはラーションの「田園組曲」です。楽器編成は、Fl(2)、Ob(2)、Cl(2)、Fg(2)、Hrn(2)、Tp(2)、Timp.、弦楽5部、となっています。弦楽の配置は、左から1st-Vn、2nd-Vn、Vc、Vla、その右奥にCb(3)となっています。
ラーションという作曲家は初めて知る人ですが、当日のプログラムや広上さんの解説によれば、スウェーデンの作曲家で放送局に勤めていた指揮者らしい。この曲は1938年に詩と朗読と音楽からなるラジオ番組のために書かれた「叙情組曲」から、演奏会のためにまとめられたものだそうで、広上さん自身も、若い頃にスウェーデンのオーケストラで仕事をしたときにオーケストラの人から教えられて大好きになった曲だそうです。第1曲:序曲、アダージョ~アレグロ。第2曲:ロマンス、アダージョ。第3曲:スケルツォ、ヴィヴァーチェ。透明感のある響きと軽やかさを持った実にステキな音楽です。こういう音楽は、商業的な制約があってCD等の録音を通じて接することは難しいでしょう。生の演奏会の機会に触れることができ、ありがたい貴重な経験だと感じます。
続いて第2曲は、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番。楽器編成には、正面最奥にTb(3:BassTbを含む)が加わり、さらに左奥にグロッケンシュピールが配されます。
独奏者は2016年、仙台国際コンクールの覇者チャン・ユジンさんです。ヒナゲシのような赤に花柄がプリントされたドレスのチャンさんは、背中まで伸ばして束ねた髪を揺らしながら、華やかな技巧の上に実に表情豊かによく歌う音楽を繰り広げます。第1楽章:アレグロ・マエストーソ。演奏しながら、指揮をよく見ているのがわかります。第2楽章:アダージョ。第3楽章:ロンド、アンダンティーノ・アレグレット・モデラート。コンサートマスター髙橋和貴さんがリードするオーケストラとの呼吸も十分です。素晴らしい!
実はこの曲、グロッケンシュピールが打ち鳴らされるところがありますが、一瞬、耳鳴りかと疑ってしまいました(^o^;)>poripori
ここで、チャンさんのアンコール。J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005」より第3楽章「ラルゴ」。一転してバッハとなりました。これも、良かった〜。コンサートマスターの髙橋和貴さんは、チャンさんの弓の持ち方?に着目していたみたいでした。
(15分の休憩)
後半は、ブラームスです。よく聴き馴染んだ曲ではありますが、何度聴いても実に内容の濃い音楽です。最初にティンパニが50回以上も同じテンポで打たれますが、これはあまり目立たせず、遠くから聞こえてくるような感じに。テンポはあまり速くなく、自然体の力強さ、伸びやかさを感じさせるとともに、弦楽セクションの響きは美しく、憧れを表しているようでもあります。木管の音色、とくにオーボエとクラリネットの音色が美しく浮かび見事ですし、コンサートマスターの髙橋さんのソロも、美音を楽しみました。全体に、次第に高まるエネルギーを感じさせ、堂々たる充実です。終楽章はコントラバスから始まりますが、広上さん、瞑目してからコントラバスを指さし、演奏が始まります。静かな弦のピツィカートから、管楽器が加わり大きなエネルギーで盛り上がります。ホルンの音は堂々と、北ドイツの平野に広がるように。第九のような旋律も、オードドックスな自然な流れで、トゥッティが力強く盛り上がります。
アンコールは、ラーションの第2曲「ロマンス」を弦楽合奏で。これも良かった〜。もうひとつ、NHK-FMでの放送予定が発表されていました。こちらも、楽しみです(^o^)/
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(*1):山響第203回定期演奏会「ペテルブルクの栄光」を聴く~「電網郊外散歩道」2010年3月
- L=E・ラーション/田園組曲 作品19
- パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第2番 ロ短調 作品7
- ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 作品68
指揮:広上淳一、ヴァイオリン独奏:チャン・ユジン
演奏:山形交響楽団、会場:山形テルサホール
というものです。18時30分から、恒例のプレコンサートが開かれたのですが、今回はいつもと趣向が違いました。なんと、客演を含む山響金管奏者と吹奏楽部の女子高生の計11人による合同演奏だったのです。
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なんでも、東北電力の後援により2月に開催された「ブラスパルコンサート」参加者の中から、土曜が山形城北女子高校、日曜が寒河江高校と東桜学館高校の吹奏楽部員が出演するそうで、今回の曲目はジョヴァンニ・ガブリエリの「ピアノとフォルテのソナタ」から。ガブリエリらしい華やかさのあるきれいな音が出ていて、とてもよかった。こういうサプライズは、まさに企画の勝利!という感じです(^o^)/
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次いで、開演前のプレトークは、西濱事務局長と広上淳一さんです。例によって着替え前のラフな格好で、実に自然体の広上さんが「カーリング女子の試合の話題」から始めます。演奏会があってカーリング女子の試合が見られないのが残念そうでした。そだねー(^o^)/
広上さんは、山響に客演するのは八年ぶりということですが、前回(*1)のホールは山形県民会館だったか。
西濱事務局長は、サプライズで特別ゲストをステージに呼び入れます。なんと、音楽監督の飯森範親さんでした。飯森さんは、広上さんの指揮する演奏を聴きたいと足を運んだとのことでしたが、実は息子さんと蔵王にスキーに来ているらしいです(^o^)/
広上さんは、2004年からもう14年になる飯森さんと山響との関係を、「山響と山形への愛」と讃えます。確かに、飯森さんが山響の常任指揮者に就任した2004年の定期演奏会、あのバルトークの「管弦楽のための協奏曲」の記憶は鮮烈です。その後の歩みと実りは、山響というオーケストラが「あすなろ」の時代を脱し、大樹へと成長する過程にほかなりません。外から見える広上さんの目には、きっと「地方オーケストラが作り出す活力ある文化の時代」が見えているのでしょう。
演奏会が始まると、第1曲めはラーションの「田園組曲」です。楽器編成は、Fl(2)、Ob(2)、Cl(2)、Fg(2)、Hrn(2)、Tp(2)、Timp.、弦楽5部、となっています。弦楽の配置は、左から1st-Vn、2nd-Vn、Vc、Vla、その右奥にCb(3)となっています。
ラーションという作曲家は初めて知る人ですが、当日のプログラムや広上さんの解説によれば、スウェーデンの作曲家で放送局に勤めていた指揮者らしい。この曲は1938年に詩と朗読と音楽からなるラジオ番組のために書かれた「叙情組曲」から、演奏会のためにまとめられたものだそうで、広上さん自身も、若い頃にスウェーデンのオーケストラで仕事をしたときにオーケストラの人から教えられて大好きになった曲だそうです。第1曲:序曲、アダージョ~アレグロ。第2曲:ロマンス、アダージョ。第3曲:スケルツォ、ヴィヴァーチェ。透明感のある響きと軽やかさを持った実にステキな音楽です。こういう音楽は、商業的な制約があってCD等の録音を通じて接することは難しいでしょう。生の演奏会の機会に触れることができ、ありがたい貴重な経験だと感じます。
続いて第2曲は、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番。楽器編成には、正面最奥にTb(3:BassTbを含む)が加わり、さらに左奥にグロッケンシュピールが配されます。
独奏者は2016年、仙台国際コンクールの覇者チャン・ユジンさんです。ヒナゲシのような赤に花柄がプリントされたドレスのチャンさんは、背中まで伸ばして束ねた髪を揺らしながら、華やかな技巧の上に実に表情豊かによく歌う音楽を繰り広げます。第1楽章:アレグロ・マエストーソ。演奏しながら、指揮をよく見ているのがわかります。第2楽章:アダージョ。第3楽章:ロンド、アンダンティーノ・アレグレット・モデラート。コンサートマスター髙橋和貴さんがリードするオーケストラとの呼吸も十分です。素晴らしい!
実はこの曲、グロッケンシュピールが打ち鳴らされるところがありますが、一瞬、耳鳴りかと疑ってしまいました(^o^;)>poripori
ここで、チャンさんのアンコール。J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005」より第3楽章「ラルゴ」。一転してバッハとなりました。これも、良かった〜。コンサートマスターの髙橋和貴さんは、チャンさんの弓の持ち方?に着目していたみたいでした。
(15分の休憩)
後半は、ブラームスです。よく聴き馴染んだ曲ではありますが、何度聴いても実に内容の濃い音楽です。最初にティンパニが50回以上も同じテンポで打たれますが、これはあまり目立たせず、遠くから聞こえてくるような感じに。テンポはあまり速くなく、自然体の力強さ、伸びやかさを感じさせるとともに、弦楽セクションの響きは美しく、憧れを表しているようでもあります。木管の音色、とくにオーボエとクラリネットの音色が美しく浮かび見事ですし、コンサートマスターの髙橋さんのソロも、美音を楽しみました。全体に、次第に高まるエネルギーを感じさせ、堂々たる充実です。終楽章はコントラバスから始まりますが、広上さん、瞑目してからコントラバスを指さし、演奏が始まります。静かな弦のピツィカートから、管楽器が加わり大きなエネルギーで盛り上がります。ホルンの音は堂々と、北ドイツの平野に広がるように。第九のような旋律も、オードドックスな自然な流れで、トゥッティが力強く盛り上がります。
アンコールは、ラーションの第2曲「ロマンス」を弦楽合奏で。これも良かった〜。もうひとつ、NHK-FMでの放送予定が発表されていました。こちらも、楽しみです(^o^)/
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(*1):山響第203回定期演奏会「ペテルブルクの栄光」を聴く~「電網郊外散歩道」2010年3月