朝からよく晴れて、まだ4月なのに最高気温が30℃という予報が出ていた日、夕方から山形市の文翔館議場ホールに出かけ、山形弦楽四重奏団第91回定期演奏会を聴きました。今回はヴァイオリンの中島光之さんが開演前のトークを担当、プログラムの演目について解説をします。
1曲目、モーツァルトの弦楽四重奏曲第2番は、モーツァルト16歳の頃の作品。前々回の定期演奏会(*1)で取り上げた第1番が14歳頃の作品であることを思うと、14歳と16歳の間の差異がどれほどのものかと思いますが、いやいや、男子中学生と男子高校生の間の差異を思うと、それはかなりのものがあるように思います(^o^)/
ステージ上の配置は、左から第1ヴァイオリン(犬伏亜里)、第2ヴァイオリン(中島光之)、ヴィオラ(倉田譲)、チェロ(茂木明人)となっています。演奏が始まると、初っ端から犬伏さんのヴァイオリンが実に溌溂! 音も飛び出してくるようで、若いモーツァルトの活力が現れるようです。加えて安定のチェロに安心感があります。若いモーツァルトの第2番、いい曲だと感じました。
2曲めはシューベルトです。中島さんが気合を入れて書いたと思われるプログラムノートには、「11歳から16歳までの間、シューベルトが寄宿学校に入っていた間に作曲された12曲の弦楽四重奏曲の第2曲」で、「休暇で実家に戻った時に家族で演奏するというプライベートな目的で書かれた」とありますが、現代人の私の感覚では、例えば第1楽章:プレストは家庭用としてはずいぶんカッコいい音楽と感じられます。第2楽章:アンダンテでは、ヴァイオリンが悲哀を感じさせる歌曲のような旋律を奏でますが、こういう感情の発露を師事していたサリエリは好ましく思わなかったのだそうな。形式の中に隠してこそ貴族的な上品さに通じるみたいな考えでしょうが、現代の私たちにはこういう率直さのほうが魅力的ですし、シューベルトの家庭環境もそれを良しとしていたのではなかろうか。第3楽章:メヌエット。3拍子の舞曲風ではありますが、すでに踊りのための音楽ではないようです。第4楽章:アレグロ・コン・スピリト。ずっと後のロマン派の音楽を先取りするような激しさもある音楽で、のんびりした家庭用音楽のイメージではありません。こちらもいい曲だなあと感じました。
15分の休憩後、3曲めはモーツァルトの6曲ある弦楽五重奏曲のうちの第1番。楽器配置は、左から1st-Vn(犬伏)、2nd-Vn(中島)、素人音楽愛好家にはどっちが1stかわかりませんが、たぶん2nd-Vla(田中知子)、1st-Vla(倉田)、そしてVc(茂木) というものです。第1楽章:アレグロ・モデラート、奏者が1人増えただけなのに、ステージ上の見た目はぎっしり感があるし、流れる音楽も密度が上がったような気がします。第2楽章:アダージョ。演奏が始まる前、みなさん楽器に何かモジョモジョとやっていたけれど、わかりました! 弱音器を付けていたのですね! ふだんCD等で聴いているとき、この楽章の音がどこかくぐもったような響きがするのを不思議に思っていたのでしたが、積年の謎が解けました。「ワトソン君、謎は解けたよ」です。特に、VnとVlaの対話が音色的にも魅力的です。また、Vcが一瞬にして場面を転換するところなども見事です。1st-Vnの歌が魅力的で、これを弱く受ける2nd-Vnも可憐な印象。いや、見た目は逆なのですが(^o^)/ しかしこのくぐもったようなVlaの音色はいいなあ。
第3楽章:メヌエット。弱音器を外して軽くチューニングの後に演奏が始まります。優美な3拍子の舞曲は、文翔館ならバレエシーンも似合いそうだなあと思います。第4楽章:アレグロ。いつも思うのですが、この曲は馬車の中で音を聴いているみたいなところがあって、旅する若者が前途に思いを馳せるような風情があります。演奏は他の会場で何度かの公演を積み重ねてきた集大成となったようで、若々しい活力があり、たいへん魅力的なものでした。積年の謎が解けた喜びもあり、実に満足、大満足です!
なお、次回は7月24日(水)、19時〜、やまぎん県民ホール・スタジオ1にて、小松﨑恭子さんのフルートを加えて、ヴェント編曲によるフルート四重奏版のモーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」とのことです。すっかりシリーズ化してきているようで、これも楽しみです。まだ桃の収穫時期には間がありますので、なんとか都合をつけて出かけたいものです。
(*1): 山形弦楽四重奏団第89回定期演奏会でモーツァルト、シューベルト、ベートーヴェンを聴く〜「電網郊外散歩道」2023年10月
- モーツァルト 弦楽四重奏曲第2番 ニ長調 K.155
- シューベルト 弦楽四重奏曲第2番 ハ長調 D.32
- モーツァルト 弦楽五重奏曲第1番 変ロ長調 K.174
山形弦楽四重奏団、犬伏亜里(Vn)、田中知子(Vla)
1曲目、モーツァルトの弦楽四重奏曲第2番は、モーツァルト16歳の頃の作品。前々回の定期演奏会(*1)で取り上げた第1番が14歳頃の作品であることを思うと、14歳と16歳の間の差異がどれほどのものかと思いますが、いやいや、男子中学生と男子高校生の間の差異を思うと、それはかなりのものがあるように思います(^o^)/
ステージ上の配置は、左から第1ヴァイオリン(犬伏亜里)、第2ヴァイオリン(中島光之)、ヴィオラ(倉田譲)、チェロ(茂木明人)となっています。演奏が始まると、初っ端から犬伏さんのヴァイオリンが実に溌溂! 音も飛び出してくるようで、若いモーツァルトの活力が現れるようです。加えて安定のチェロに安心感があります。若いモーツァルトの第2番、いい曲だと感じました。
2曲めはシューベルトです。中島さんが気合を入れて書いたと思われるプログラムノートには、「11歳から16歳までの間、シューベルトが寄宿学校に入っていた間に作曲された12曲の弦楽四重奏曲の第2曲」で、「休暇で実家に戻った時に家族で演奏するというプライベートな目的で書かれた」とありますが、現代人の私の感覚では、例えば第1楽章:プレストは家庭用としてはずいぶんカッコいい音楽と感じられます。第2楽章:アンダンテでは、ヴァイオリンが悲哀を感じさせる歌曲のような旋律を奏でますが、こういう感情の発露を師事していたサリエリは好ましく思わなかったのだそうな。形式の中に隠してこそ貴族的な上品さに通じるみたいな考えでしょうが、現代の私たちにはこういう率直さのほうが魅力的ですし、シューベルトの家庭環境もそれを良しとしていたのではなかろうか。第3楽章:メヌエット。3拍子の舞曲風ではありますが、すでに踊りのための音楽ではないようです。第4楽章:アレグロ・コン・スピリト。ずっと後のロマン派の音楽を先取りするような激しさもある音楽で、のんびりした家庭用音楽のイメージではありません。こちらもいい曲だなあと感じました。
15分の休憩後、3曲めはモーツァルトの6曲ある弦楽五重奏曲のうちの第1番。楽器配置は、左から1st-Vn(犬伏)、2nd-Vn(中島)、素人音楽愛好家にはどっちが1stかわかりませんが、たぶん2nd-Vla(田中知子)、1st-Vla(倉田)、そしてVc(茂木) というものです。第1楽章:アレグロ・モデラート、奏者が1人増えただけなのに、ステージ上の見た目はぎっしり感があるし、流れる音楽も密度が上がったような気がします。第2楽章:アダージョ。演奏が始まる前、みなさん楽器に何かモジョモジョとやっていたけれど、わかりました! 弱音器を付けていたのですね! ふだんCD等で聴いているとき、この楽章の音がどこかくぐもったような響きがするのを不思議に思っていたのでしたが、積年の謎が解けました。「ワトソン君、謎は解けたよ」です。特に、VnとVlaの対話が音色的にも魅力的です。また、Vcが一瞬にして場面を転換するところなども見事です。1st-Vnの歌が魅力的で、これを弱く受ける2nd-Vnも可憐な印象。いや、見た目は逆なのですが(^o^)/ しかしこのくぐもったようなVlaの音色はいいなあ。
第3楽章:メヌエット。弱音器を外して軽くチューニングの後に演奏が始まります。優美な3拍子の舞曲は、文翔館ならバレエシーンも似合いそうだなあと思います。第4楽章:アレグロ。いつも思うのですが、この曲は馬車の中で音を聴いているみたいなところがあって、旅する若者が前途に思いを馳せるような風情があります。演奏は他の会場で何度かの公演を積み重ねてきた集大成となったようで、若々しい活力があり、たいへん魅力的なものでした。積年の謎が解けた喜びもあり、実に満足、大満足です!
なお、次回は7月24日(水)、19時〜、やまぎん県民ホール・スタジオ1にて、小松﨑恭子さんのフルートを加えて、ヴェント編曲によるフルート四重奏版のモーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」とのことです。すっかりシリーズ化してきているようで、これも楽しみです。まだ桃の収穫時期には間がありますので、なんとか都合をつけて出かけたいものです。
(*1): 山形弦楽四重奏団第89回定期演奏会でモーツァルト、シューベルト、ベートーヴェンを聴く〜「電網郊外散歩道」2023年10月