節分の夜、山形市の文翔館議場ホールで山形弦楽四重奏団の第82回定期演奏会を聴きました。開演前のプレトークで、ヴァイオリンの中島光之さんが話した内容が興味深いものでした。雪のために滑って腕を複雑骨折した人が、手術をすることになったそうです。部分麻酔なので処置をする音とか手術スタッフが話す中身が聞こえてしまう! 確かに、これはあまり気持ちの良いものではありません(^o^)/ その病院では、手術中にヘッドホンで好きな音楽を聞かせてくれるのだそうです。なるほど、それならば手術中の不安や心細さを和らげてくれそうです。この演奏会が、コロナ禍の中に過ごす私たちの不安定な気持ちを和らげるものであってほしいという願いからであろうと聞きました。
さて、本日のプログラムは、
というものです。
最初の曲の作曲者コンラディン・クロイツァーは1780年生まれといいますから、1770年生まれのベートーヴェンよりも10歳年下です。Wikipedia によれば、オペラ中心の作曲活動をした人らしく、日本にもゆかりの深いヴァイオリニストのレオニード・クロイツァーとは時代も違う別人のようです。ステージ上の配置は、左からクラリネットの川上一道さん。今日は沖縄風なのでしょうか、水玉模様みたいに見えるシャツ?を着ての登場です。さらにヴァイオリンの中島光之さん、ヴィオラの倉田譲さん、チェロの茂木明人さん。第1楽章:アレグロ。始まりのクラリネットの低音が実にいい音で、ぐいっと耳を持っていかれる感じがしました。伸びやかな旋律、弦も優雅な雰囲気です。第2楽章:アンダンテ・グラツィオーソ。クラリネットの中高域を中心にした優しい響きの始まりです。川上さんのクラリネットの音がいいなあ。そして黒づくめの男ばかりなのに弦のアンサンブルが実に優雅です。第3楽章:ロンド、アレグロ。やはりクラリネットの高域の音色で始まります。ヴァイオリンとのかけあいも、チェロとの対話も、チャーミング。そうですね、クラリネットがオペラの名バリトン歌手の少し大きめの身振りを連想させるような、そんな楽想のうねりもあって、なかなか魅力的な音楽と感じました。
続いてシベリウスの弦楽三重奏曲です。単一楽章の短い曲ですが、ヴァイオリンとヴィオラによる、何かを訴えるような音にチェロも短く答える始まりは、レントのテンポ指定もあり、パセティックな雰囲気があります。プログラムノートによれば、進むべき道がまだ決まらない20代のシベリウスの焦燥や不安定な気持ちをぶつけたような曲なのかも。誰でも多少は経験することかもしれないけれど、本人にとっては一度きりの切実な悩みの時期。思わず若い時代を思い出して共感してしまいました。日常的に何度も繰り返して聴こうという曲ではないかもしれないけれど、何かの折にふと聴いてみたくなるような音楽です。初めて聴きましたが、良い曲を知ることができました。
ここで15分の休憩。後半は、新垣雄(Arakaki Takashi)さんの新作です。不協和音と、小動物が駆けて立ち止まるようなトトトトト…という短い音が印象的な始まり(ミステリオーソ・テンポ・ルバート)の後に沖縄民謡のテイストで、「てぃんさぐぬ花」「花ぬ風車(かじまやー)」「いったーあんまーまーかいが」「じんじん」と続いた後で、再び「てぃんさぐぬ花」「いったーあんまーまーかいが」、そして「赤田首里殿内」「谷茶前」「花ぬ風車」が演奏されます。曲の終わりの方は、それぞれ奏者の腕の見せ所だぜ!とでもいうようなフィナーレ。現代的な感性と、どこか懐かしい民謡風の響き、旋律、リズム。濃厚に音を重ねるやり方ではなく、もっとずっと素朴に、響きが順次並び立つことで音の背後に広がりを感じさせるような音楽でした。良かった〜! そうか、弦のピツィカートは沖縄の三線か!
新型コロナウィルスのオミクロン株が中心と思われる感染拡大で、県内の複数ヶ所で蔓延防止重点措置が宣言される中で、換気のために窓を開けて少し低めの室内温度の中で開催された定期演奏会。集まった人数はいつもよりもやや少なめでしたが、コアな聴衆の拍手に応えて、アンコールはフィナーレの部分をもう一度。ちょいとノリノリの感じで、それも良かった〜! 「来てよかった」と感じた演奏会でした。
◯
参考のために、シベリウスの弦楽三重奏曲というのはこんな曲です。YouTube より、
Jean Sibelius | Sting trio g minor
さて、本日のプログラムは、
- C.クロイツァー クラリネット四重奏曲 変ホ長調
- J.シベリウス 弦楽三重奏曲 ト短調
- 新垣雄 Rhapsody in Uchinaa Ⅱ(川上一道委嘱作品・世界初演)
演奏:山形弦楽四重奏団、クラリネット:川上一道(山響)
というものです。
最初の曲の作曲者コンラディン・クロイツァーは1780年生まれといいますから、1770年生まれのベートーヴェンよりも10歳年下です。Wikipedia によれば、オペラ中心の作曲活動をした人らしく、日本にもゆかりの深いヴァイオリニストのレオニード・クロイツァーとは時代も違う別人のようです。ステージ上の配置は、左からクラリネットの川上一道さん。今日は沖縄風なのでしょうか、水玉模様みたいに見えるシャツ?を着ての登場です。さらにヴァイオリンの中島光之さん、ヴィオラの倉田譲さん、チェロの茂木明人さん。第1楽章:アレグロ。始まりのクラリネットの低音が実にいい音で、ぐいっと耳を持っていかれる感じがしました。伸びやかな旋律、弦も優雅な雰囲気です。第2楽章:アンダンテ・グラツィオーソ。クラリネットの中高域を中心にした優しい響きの始まりです。川上さんのクラリネットの音がいいなあ。そして黒づくめの男ばかりなのに弦のアンサンブルが実に優雅です。第3楽章:ロンド、アレグロ。やはりクラリネットの高域の音色で始まります。ヴァイオリンとのかけあいも、チェロとの対話も、チャーミング。そうですね、クラリネットがオペラの名バリトン歌手の少し大きめの身振りを連想させるような、そんな楽想のうねりもあって、なかなか魅力的な音楽と感じました。
続いてシベリウスの弦楽三重奏曲です。単一楽章の短い曲ですが、ヴァイオリンとヴィオラによる、何かを訴えるような音にチェロも短く答える始まりは、レントのテンポ指定もあり、パセティックな雰囲気があります。プログラムノートによれば、進むべき道がまだ決まらない20代のシベリウスの焦燥や不安定な気持ちをぶつけたような曲なのかも。誰でも多少は経験することかもしれないけれど、本人にとっては一度きりの切実な悩みの時期。思わず若い時代を思い出して共感してしまいました。日常的に何度も繰り返して聴こうという曲ではないかもしれないけれど、何かの折にふと聴いてみたくなるような音楽です。初めて聴きましたが、良い曲を知ることができました。
ここで15分の休憩。後半は、新垣雄(Arakaki Takashi)さんの新作です。不協和音と、小動物が駆けて立ち止まるようなトトトトト…という短い音が印象的な始まり(ミステリオーソ・テンポ・ルバート)の後に沖縄民謡のテイストで、「てぃんさぐぬ花」「花ぬ風車(かじまやー)」「いったーあんまーまーかいが」「じんじん」と続いた後で、再び「てぃんさぐぬ花」「いったーあんまーまーかいが」、そして「赤田首里殿内」「谷茶前」「花ぬ風車」が演奏されます。曲の終わりの方は、それぞれ奏者の腕の見せ所だぜ!とでもいうようなフィナーレ。現代的な感性と、どこか懐かしい民謡風の響き、旋律、リズム。濃厚に音を重ねるやり方ではなく、もっとずっと素朴に、響きが順次並び立つことで音の背後に広がりを感じさせるような音楽でした。良かった〜! そうか、弦のピツィカートは沖縄の三線か!
新型コロナウィルスのオミクロン株が中心と思われる感染拡大で、県内の複数ヶ所で蔓延防止重点措置が宣言される中で、換気のために窓を開けて少し低めの室内温度の中で開催された定期演奏会。集まった人数はいつもよりもやや少なめでしたが、コアな聴衆の拍手に応えて、アンコールはフィナーレの部分をもう一度。ちょいとノリノリの感じで、それも良かった〜! 「来てよかった」と感じた演奏会でした。
◯
参考のために、シベリウスの弦楽三重奏曲というのはこんな曲です。YouTube より、
Jean Sibelius | Sting trio g minor
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