電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」を聴く

2016年10月22日 06時05分05秒 | -オーケストラ
和歌の世界には「本歌取り」というものがある、ということを習いました。例えば、『古今集』にあるプレイボーイの詠み人知らずの歌:

きみををきて あだし心を わが持たば 末の松山 浪も越えなむ
(あなたをさしおいて、もし私が浮気心を持ったなら、末の松山を波が越えてしまうでしょうよ)

に対して、その下の句を取り、百人一首の清原元輔が

契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは
(誓ったよね、涙に濡れた袖を絞りながら、末の松山を波が越すことはないように、二人の思いも変わることはない、って)

と突っ込むようなものです。



音楽の世界にも、「○○の主題による変奏曲」というのがたくさんあり、元の主題が人気があったり有名だったりすると、変奏曲のほうも親しまれ有名になるという傾向があるようです。

ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」は、昔はぜんぜん主題に馴染みがなく、残念ながら「馬の耳に念仏」の状態でしたが、近年になって(*1)四手のために編曲されたピアノ曲としてウェーバーの序曲集を聴き、その中の「トゥーランドット」の音楽のユーモラスなリズムと旋律に接するようになってから、印象は一変しました。

ちょうど、『古今集』の本歌がわかって清原元輔のツッコミが理解できると面白さが格段に増すように、ウェーバーの「トゥーランドット」になじんだ後にはヒンデミットの「交響的変容」の第2曲を手がかりに、他の3曲も実に楽しく聴けるようになります。ビッグバンド・ジャズ風なテイストも感じられたり、パーカッションの活躍も楽しかったり、耳にするときの反応が段違いに良好です(^o^)/

第1楽章:アレグロ
第2楽章:「トゥーランドット、スケルツォ」、モデラート、活発に
第3楽章:アンダンティーノ
第4楽章:マーチ

前の東京オリンピックの年、日付変更線の向こう側ではありますが、1964年の10月10日にクリーヴランドのセヴェランス・ホールで録音されたもので、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の絶好調時の見事な演奏を堪能できます。そろそろパブリック・ドメインになっているのかもしれないけれど、参考までに CDはSONYの SRCR-2559 です。

■ヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」、Szell/CLO
I=3'57" II=7'05" III=4'00" IV=4'24" total=19'26"

(*1):ウェーバー「序曲集~四手のためのピアノ編曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2014年11月

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