(西に傾く月)
ピピーピピー、ピピー、ピーピピ、生き物たちは鳴く
鳴いて、囀って存在をアピールしている
飛び回り、追いかけ求める
自然の営みの単調さの美
囀る、鳴く、威嚇する 闘う 生存のきらめきが
キャンパスの宇宙、自然の中で繰り返されている
そしておぼろ月
ぽっかりと西の空
宇宙のサイクル
何気ない少女の頃の南洋の記憶が
生々しい事実を突きつけることがあるということ
金曜日は海軍が来て土曜日は陸軍がきた
料亭は多かったよ
南洋の軍の慰問公演で少女たちもまた躍った
料亭はまた踊子がいて仲居さんたちがいて
妓楼にもなった
戦前の記憶がおもわず甦ってくる
誰彼の生きてきた痕跡がイソヒヨドリのピーピーピピ、ピピーピピー
時に朗々と時に哀愁がこもるピピーピピー、ピーピピーに重なる