ドンドンと戸を叩く音に 寝入りばなを起こされて
戸を開けてみれば そこにきれいな娘が立っていた
「 先生 父の具合が悪くて・・・
こんな夜分に申し訳ないのですが どうか診てやってください 」
娘の必死な頼みに 診療鞄を抱え 一緒に家を出た
暗闇のなかで 前を行く娘の手にした提灯だけが頼りだが・・・
その灯り 明るく輝いたかと思うと すぅーっと暗くなる
普通の提灯の灯りとは違い 点滅しているかのようだ
不思議に思いながら ほのかに照らし出される娘の影に目を遣り
ギョッとした
ピンと尖った耳・・・
尻のあたりで揺れているのは 尻尾?
その時 娘が振り向き 微笑んだ
「 先生 もうすぐそこです 」
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ホタルブクロ(蛍袋)は 蛍の時期に咲く花
釣鐘の形をした花に 蛍を入れて楽しんだともいわれています
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