身動きの取れない満員電車の中に 赤ん坊の泣き声があがった
なかなか泣きやみそうにない
イヤホンをしている人は別にして
車内の人たちの神経が いっせいに そっちに向いたのが感じ取れる
何しろ 次の駅まで12分程あるのだから・・・
赤ちゃんを抱いている人は 座っているのだろうか?
そりゃあ 座っているに決まっている
こんな状況で 赤ちゃんを抱いて立っている事なんか不可能だ
心配しなくても大丈夫・・・
そうであっても 身の縮まる思いだろうなぁ~
何とか泣き止むか 降りる駅に早く着けばいいのにと 相手の身になって思ってしまう
ずっと昔 バスの中で 赤ん坊だった娘が火のついたように泣き出した事があった
どうしても泣き止まず 私の方が泣きたくなった
子どもを育てた人なら そんな経験は誰にもあるから 寛大な気持ちでいられるだろう
でも 泣く子の声は 全精力をかけているから凄いのだ
分かっていても 普通なら神経がイライラしてくる
そんな時 こんな風に想像を羽ばたかせてみては?
ここは昔の下町の長屋
仕事を終えて帰ってきた長屋の衆が
降りそぼる雨に 狭い長屋の屋根の下で 身を寄せ合い過ごしていると
ペラッペラの薄い壁を通して 赤子の泣く声が聞こえてくる
「 なんだね・・ こんなシケた晩には 赤子の泣く声は景気づけにいいもんだね~ 」
と 八っあん
「 生きてるって気がすらあな!
赤子の泣く声を肴に 一杯やるってえのもいいもんだなぁ~ 」と 熊さん
あら! あっという間に 駅に着いてしまいました