MONAのフォト・ギャラリー

写楽・・話楽・・・な日々

八っあん 熊さん 

2014-06-05 23:17:14 | 小さなおはなし


身動きの取れない満員電車の中に 赤ん坊の泣き声があがった 

なかなか泣きやみそうにない 

イヤホンをしている人は別にして 

車内の人たちの神経が いっせいに そっちに向いたのが感じ取れる 

何しろ 次の駅まで12分程あるのだから・・・ 


赤ちゃんを抱いている人は 座っているのだろうか? 

そりゃあ 座っているに決まっている 

こんな状況で 赤ちゃんを抱いて立っている事なんか不可能だ 

心配しなくても大丈夫・・・ 

そうであっても 身の縮まる思いだろうなぁ~ 

何とか泣き止むか 降りる駅に早く着けばいいのにと 相手の身になって思ってしまう 

 


ずっと昔 バスの中で 赤ん坊だった娘が火のついたように泣き出した事があった 

どうしても泣き止まず 私の方が泣きたくなった  

子どもを育てた人なら そんな経験は誰にもあるから 寛大な気持ちでいられるだろう 

でも 泣く子の声は 全精力をかけているから凄いのだ 

分かっていても 普通なら神経がイライラしてくる 


そんな時 こんな風に想像を羽ばたかせてみては? 

ここは昔の下町の長屋 

仕事を終えて帰ってきた長屋の衆が  

降りそぼる雨に 狭い長屋の屋根の下で 身を寄せ合い過ごしていると 

ペラッペラの薄い壁を通して 赤子の泣く声が聞こえてくる 

「 なんだね・・ こんなシケた晩には 赤子の泣く声は景気づけにいいもんだね~ 」

と 八っあん 

「 生きてるって気がすらあな! 

赤子の泣く声を肴に 一杯やるってえのもいいもんだなぁ~ 」と 熊さん 


あら! あっという間に 駅に着いてしまいました

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする