ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

小学校で授業をしました

2007-02-05 20:57:20 | 能楽
先週以来、若手を中心にした能楽師の新年会を催したり、ぬえのお弟子さんの新年会をしたり、なんだか忙しくしております。

で、今日は近所の練馬区光が丘第八小学校でワークショップを行って参りました。この催しは、去年の秋に ぬえが同校のPTA有志のお招きを受けて放課後に能楽のデモンストレーションを行ったことがキッカケになって実現したものです。その折のデモンストレーションは主に低学年の子どもたちが対象だったのですが、これを観覧された校長先生がとっても喜んでくださって、次はぜひ高学年を対象にしたワークショップを、というお話を賜ったのです。そんなわけで今回のワークショップは校長先生のお考えによって小学校4~6年生を対象に2校時=45分間×2コマ=という規模となりました。3学年を合わせて参加者は120名でしたが、少子化の影響が色濃い昨今、この児童数は多いのか少ないのか。。

ご存じの通り、ぬえは静岡県の伊豆の国市で子どもたちの指導をしておりまして、その伊豆の子どもたちと同じ学年の児童と触れあうのは慣れているはずなのですが、これがなかなか。(^^;) なんせ伊豆では半年近くを、薪能への出演という大きな目標を持ってみんなで進んでいくワケで、参加する子どもたちはみな自分から進んで応募した子ばかりだし、稽古時間もたっぷりあります。

今回の場合は短時間で1回限りのワークショップで、こういう方式で行うワークショップでは ぬえはむしろ低学年や保育園児を対象にしたものの方が多いのです。小学校高学年/中学生という大人としての自我が芽生えてくる年齢の子どもたちをどう扱うのか。ちょっと不安もありましたが。

でも、これを見よ。



もう、少し話をしているうちに、ははあ、この子たちはもうキチンとした分別がある事はわかりました。開始前に会場に来た子どもたちは能面や道具類などが展示されているのを見て「触ってもいいの?」と ぬえに聞いてきました。「あ、ゴメンね、これは触らないで見てね~」と言っておきましたが、その後は子どもたち同士でちゃんとその情報を伝えて、誰一人勝手に展示物に触るとか、ましてやそれで遊び出す、という事もなかったのです。

そこで、これはかなり冒険だったけれども、能面を実際に掛けて見せる実演のあとで、子どもたちに面を掛ける体験をさせて見ることにしました。挙手を求めて能面体験の希望者を募ったところ、一人の男の子がおずおずと…。 この「一人の」、というところがまた良かった。みんなが我先に手を挙げたら、注意に従って正しく面を扱えるのか、ぬえはやっぱり信用できなかったでしょう。

多くの子が興味本位で付和雷同のように手を挙げたのではなく、一人だけが手を挙げた。責任も信念も彼の意識にはちゃあんとあったのだと思います。そして彼は ぬえの言う通り面に礼を尽くし、ふざける事もありませんでした。ぬえは安心して、彼をモデルに使って能面の視野の実験をしてみました。

能面を子どもに掛けさせる。。能楽師の中にはこの画像を見て嫌悪感を抱く方もあるかも。不謹慎と思われるかもしれませんが、ぬえは、これをやって良かったと思います。能面の扱いは彼にはキチンとできましたし、そういう事が正しく行えた上でならば、実際の面に子どもが触れるのも能楽の普及のためには助けとなる可能性もある、と信じます。



最後にすこし時間があったので、担任の先生の一人にお装束を着付けて、体験して頂きました。なんだか最近はこういう学校でのワークショップの機会が多くて、2月には3カ所の学校・保育園でワークショップを持つ予定があります。能の公演が少ない時期ですので、こういう事もやりやすい季節ですね。ぬえは子どもたちと触れあう機会が好きなので、楽しい季節だったりします。