え~~、『翁』で大鼓が横を向いて着座している、それは能の中では珍しいことではなかろうか、という話題になりましたが、今日は研能会の申合があり、これはよい機会がすぐに来たなっ、と思い、さっそく楽屋で大鼓方に聞いてみました。うんっ、世の中に勉強のチャンスは尽きないねっ! …と思ったら、さっそく昨日の ぬえの観察に違っていた点があることが判明…またやっちゃった。
この大鼓方に聞いたところでは、『翁』で「翁」の間は大鼓方は参加しないといえども、小鼓方が床几に掛かるときにやはり大鼓方も正面に向くのだそうです。ええっ!?
ぬえもすぐに聞き返して「だって…“座して居たれども”のところの大鼓の調ベは…横に向いてクツロいでいなかったっけ…? ずっとそんな印象を持っていたんだけど…」そしたら彼はコトモナゲにこう教えてくれました。「ああ。そこだけ横に向くんだよ」 。。。ああ、そうなの。。(;_:)
するとそこに居合わせた某小鼓方が口を挟みました。「そのな、“真ノ調ベ”ちうのは小鼓に遠慮して横を向いて打つんや」 おお、また新説だ。(゜-゜) 「ははあ、なるほど、やはり『翁』の間は小鼓の物だ、ということで…」「そうや。本来『翁』は床几には掛けんで、座って打つはずのものなんや。」 え~~ (◎-◎) 「そうなんですか…。そうだとすると、なるほど、正面に向いて打つ小鼓の邪魔にならないように横に向いて…」「そうや!」 …そうなのか。う~ん不見識なのか、ぬえは正座して小鼓を打つ『翁』の古い絵などは見たことがないのだけれど…
小鼓の先生がお帰りになってから ぬえはこの大鼓方に聞いてみました。「ところでさ、さっき言っていた“真ノ調ベ”って… そういう名前なの?」「いいや~~? 知らんかった。帰ったらさっそく手付けに書き加えておかなきゃ(笑)」 キミの流儀の話じゃないか~(*^。^*)
冗談はさておき、この大鼓方はこう付け加えました。「さっきの話の“横を向いている”という話だけど、案外、流儀によってはずっと横を向いている場合もあるかも。なんせ『道成寺』の乱拍子だって大鼓の流儀であれほど作法が違うわけだから」…なるほどそういう事もあるかもしれません。
蛇足ながら、よい機会なので太鼓方にも『翁付』の際の作法を聞いてみました。これがまた面白かった。
太鼓方もやはり、小鼓が床几に掛けるときに正面を向くのだそうです。ところが、常の能と大きく異なる点がひとつ。いわく、太鼓を身体の前に立てて両手で支えているのです。常の能では太鼓方は定位置に着座すると、大小鼓が床几に掛けるときに正面を向くのですが、このとき太鼓は自分の左側の脇に立てて置いておくのです。ところが『翁付』の場合は正面に向くときに太鼓を持って向き直り、太鼓を自分の前に立てると、素袍の両袖で太鼓を包み込むように身体の前で抱えているのだそうです。
「ああ、そういえば身体の前で組んだ素袍の袖の下から、道具(太鼓)の革が覗いている写真を見たことがあるね。。ええっ!! …という事は。。『翁』の上演の間じゅう、つまり1時間もそのままの姿勢でいるの!?」
素袍を着ている場合、囃子方も、そして地謡も後見も、演奏するなり、謡うなり、という用事がないときには両手を膝の前で組んで座っているのです。囃子方の場合は、その姿勢のときには組んだ袖の下に道具(楽器)を持っている事もあります。『翁』の冒頭、囃子方が橋掛りに登場した場面などはその好例でしょう。
太鼓方はまったく打つところがない『翁』であっても、そのあとに『翁付脇能』が引き続いて上演されるときには、素袍を着て『翁』の冒頭から舞台に登場しています。このときに、正面に向いて着座するのみならず、太鼓を身体の前で保持しながら1時間、脇能が始まるまでずっと我慢して座っておられるのだそうです。これは苦しい…のかと思ったら。
「そう。ずっとこのまま。でもね、ずうっと両手を前で組んでいる地謡と比べれば、両手を太鼓に置いているぶんだけ少し楽なんだよ。いや、べつに道具に寄っかかっているわけじゃないんだけどね。」
…ひとつの曲についての話なのに、それぞれの立場も、それによる考え方もいろいろあるのねえ。。
この大鼓方に聞いたところでは、『翁』で「翁」の間は大鼓方は参加しないといえども、小鼓方が床几に掛かるときにやはり大鼓方も正面に向くのだそうです。ええっ!?
ぬえもすぐに聞き返して「だって…“座して居たれども”のところの大鼓の調ベは…横に向いてクツロいでいなかったっけ…? ずっとそんな印象を持っていたんだけど…」そしたら彼はコトモナゲにこう教えてくれました。「ああ。そこだけ横に向くんだよ」 。。。ああ、そうなの。。(;_:)
するとそこに居合わせた某小鼓方が口を挟みました。「そのな、“真ノ調ベ”ちうのは小鼓に遠慮して横を向いて打つんや」 おお、また新説だ。(゜-゜) 「ははあ、なるほど、やはり『翁』の間は小鼓の物だ、ということで…」「そうや。本来『翁』は床几には掛けんで、座って打つはずのものなんや。」 え~~ (◎-◎) 「そうなんですか…。そうだとすると、なるほど、正面に向いて打つ小鼓の邪魔にならないように横に向いて…」「そうや!」 …そうなのか。う~ん不見識なのか、ぬえは正座して小鼓を打つ『翁』の古い絵などは見たことがないのだけれど…
小鼓の先生がお帰りになってから ぬえはこの大鼓方に聞いてみました。「ところでさ、さっき言っていた“真ノ調ベ”って… そういう名前なの?」「いいや~~? 知らんかった。帰ったらさっそく手付けに書き加えておかなきゃ(笑)」 キミの流儀の話じゃないか~(*^。^*)
冗談はさておき、この大鼓方はこう付け加えました。「さっきの話の“横を向いている”という話だけど、案外、流儀によってはずっと横を向いている場合もあるかも。なんせ『道成寺』の乱拍子だって大鼓の流儀であれほど作法が違うわけだから」…なるほどそういう事もあるかもしれません。
蛇足ながら、よい機会なので太鼓方にも『翁付』の際の作法を聞いてみました。これがまた面白かった。
太鼓方もやはり、小鼓が床几に掛けるときに正面を向くのだそうです。ところが、常の能と大きく異なる点がひとつ。いわく、太鼓を身体の前に立てて両手で支えているのです。常の能では太鼓方は定位置に着座すると、大小鼓が床几に掛けるときに正面を向くのですが、このとき太鼓は自分の左側の脇に立てて置いておくのです。ところが『翁付』の場合は正面に向くときに太鼓を持って向き直り、太鼓を自分の前に立てると、素袍の両袖で太鼓を包み込むように身体の前で抱えているのだそうです。
「ああ、そういえば身体の前で組んだ素袍の袖の下から、道具(太鼓)の革が覗いている写真を見たことがあるね。。ええっ!! …という事は。。『翁』の上演の間じゅう、つまり1時間もそのままの姿勢でいるの!?」
素袍を着ている場合、囃子方も、そして地謡も後見も、演奏するなり、謡うなり、という用事がないときには両手を膝の前で組んで座っているのです。囃子方の場合は、その姿勢のときには組んだ袖の下に道具(楽器)を持っている事もあります。『翁』の冒頭、囃子方が橋掛りに登場した場面などはその好例でしょう。
太鼓方はまったく打つところがない『翁』であっても、そのあとに『翁付脇能』が引き続いて上演されるときには、素袍を着て『翁』の冒頭から舞台に登場しています。このときに、正面に向いて着座するのみならず、太鼓を身体の前で保持しながら1時間、脇能が始まるまでずっと我慢して座っておられるのだそうです。これは苦しい…のかと思ったら。
「そう。ずっとこのまま。でもね、ずうっと両手を前で組んでいる地謡と比べれば、両手を太鼓に置いているぶんだけ少し楽なんだよ。いや、べつに道具に寄っかかっているわけじゃないんだけどね。」
…ひとつの曲についての話なのに、それぞれの立場も、それによる考え方もいろいろあるのねえ。。