土曜日は伊東薪能のため伊豆に出かけてきました~。よく伊豆には行っているのに東側に海が見えるのって久しぶり…
薪能はあいにくの雨のためホールに会場が変更されました…晴天ならば、ここは全国でも珍しい水上舞台での演能となる予定だったのですが。
伊東の港に流れ込む松川という川がありまして、ほとんどその河口に近い部分のほとりに「東海館」という古い温泉旅館があります。すでに廃業しているのですが、その歴史的価値から建物は伊東市に寄贈され、市の文化財として保護され、また内部は一般に公開されています。それどころか今でも日帰り入浴施設として利用することができます。昭和初期の、贅を尽くすことが美徳で、また職人の技も活きていた時代の、本当に良い仕事の粋を集めた建物だと思います。
そうして伊東薪能ではその「東海館」を私たちは楽屋に使わせて頂き、その目前の松川の上にフタをするように仮設の見所と舞台を築き上げて、薪能は上演されるのです。まことに贅沢な趣向で、ぬえも何度かこの舞台で地謡として出演しましたが、川風に吹かれながらの舞台は本当に気持ちの良いものです。しかしながら残念ながら天候にはあまり恵まれず…前回に続いて今年もコンクリート造りのホールに会場が変更となりました。
その日は ぬえは伊東に宿泊して、翌日は長岡での稽古となりましたが、せっかくの東伊豆なので城ヶ崎を見てから南下して河津まで行き、伊豆半島の真ん中を北上して河津七滝、浄蓮の滝と廻ってから長岡に到着しました。ここまでで伊豆半島の1/3近くを周遊したことになりましょうか。それにしても東伊豆と中伊豆とではこれほど違うものなのか、と思います。人もずいぶん違うなあ、と思いますが地形もかなり違う。山が海に直結したような急峻な東伊豆とくらべると、中伊豆はいかにも平野といった感じです。もともと伊豆半島には平地はほとんどないのですが、この一帯だけは開けていて、ぬえは沼津から裏道を通って長岡に向かうのですが、平野の向こうに壁のようにずうっと山が連なっている光景を見ると、あ~帰ってきたな~、と思うんです。あの山地…天城連山はもっと南の方だし、どこなんでしょう? 箱根山地の南端、という感じなのかなあ。
さて長岡での稽古ですが、ぬえのほかの稽古場とずいぶん様相が違います。子ども能の関係からお稽古の生徒さんは小学生とそのママやパパ。(^◇^;) 能の公演とても狩野川能ぐらいしかないので、できるだけ体感的に稽古できるように努めております。面や装束をお目に掛けたり、ビデオを見たり。そこで今回は「鬘」と少々の面装束を持参しました。
ご存じかしらん、能の鬘は、「かづら」と呼んでいるのですが、人毛の鬘と馬毛(ばす)と呼ばれる馬のシッポの毛で作った鬘の2種があります。女性の役として普通に使うのは人毛の鬘ですが、人の毛は細くて扱いにくいし やや高価のため、太い馬毛の鬘の方が、いまはむしろ主流になりました。能の鬘はガバッとかぶるのではなくて、ひと流れになっている鬘を頭の上に載せてから、鬢(びん=こめかみから頬の方の髪)にあたる部分は役者の顔に合わせて演能のたびに楽屋で結って作り上げるのです。
今回はその説明のために本鬘と馬毛の鬘の2本を用意しました。小学生の女の子は自分より格段に長い人毛の本鬘を見て興味津々(↑トップ画像)。んで、喜んで頂けたので、彼女のパパにモデルになって頂いて鬘を着けてみました。
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ん~実に鬘がお似合いでした~。(^◇^;)
一応ご本人の了承を得てないから出来上がり画像は伏せておきますね~~ (;^_^A