ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東北支援の旅、スタートしました!(その21=石巻のご来光)

2012-02-05 01:05:26 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ああ、このブログも やっと年が明けました。(^◇^;)

年始は早起きして宿舎からほど近い住吉大島神社へ。ここで奉納の舞囃子をすることになっています。

考えてみれば今回の訪問では最初に訪れた釜石市・鵜住居で鵜住神社さんに舞囃子を奉納したのが活動のはじめで、活動の終わりの日…元旦に石巻で再び神前で奉納できたのはとっても幸いなことでした。

そのうえ、もう半年間も石巻に来ているのに、これまで一度も地元の神様の前でご挨拶もしていなかったので、これは ぬえにとっても大変ありがたかったのです。この神社での奉納のお話は開成仮設団地にお住まいのFさんから頂いたのですが、ぬえはもちろん飛びついて出演できるようお願いし、ほかの公演スケジュールから考えても元日のこの日の奉納しかなかった。これが結果として一番良いタイミングでの上演になりました。地元の町内会のみなさんも本当に喜んでくださって、全面的なご協力を頂きました。

この住吉神社、じつは石巻を象徴するところにあるのです。石巻駅からもほど近い距離にあり、北上川にすぐ面したところに鎮座する住吉神社ですが、その目の前の川に 四角い石がちょっと水面から顔を出していて、流れる川の水がそこで小さな渦を巻く…この石を「巻き石」と呼んでいるのですが…そう、石巻の名称の由来なのですね。





ところが…震災による地盤沈下で、この巻き石は水の下に沈んでしまったのだそうです。

そうして巻き石のすぐそばまで川岸からせり出していた小さな洲…公園のように整備されていましたが、ここも津波で壊滅。いまは立ち入り禁止の札があってロープが張られている無惨な状態でした。。

さて神社に到着すると、Fさんが待っていてくれ、まずは神社の小さな裏山に登りました。をを~、ちょうどご来光が上ってくるところに遭遇! Fさんとは、町の建て直しのために練られている計画…数mの高さの堤防を造ることなど…を伺い、その是非が論じられていることを聞きました。町を見下ろすこうした高台から眺めていると、石巻がどこへ向かおうとしているのか…いつまでもいつまでも、逡巡から抜け出せない もがきのようなものが感じられます。生活の根底を突然覆された、その苦しみは ぬえのような部外者には到底分かるはずもないでしょう。。

このあと町内会のみなさんも集まってくださり、ご一緒に拝殿の中へ。これは ぬえの方からお願いしていたことで、市内の羽黒神社と兼任でお忙しい宮司さまもわざわざお出まし頂き、笛のTさんと一緒にお祓いを受けてから、舞囃子『高砂』を奉納しました。上演場所がなかったもので、境内の砂利の上が舞台です。最近砂利の上で舞う機会が多いな~。

終わってみると足袋の裏は真っ黒け。社務所で着替えさせて頂きましたが、町会長さんは珍しそうに ぬえの真っ黒な足袋を撮影されていました。

じつは公演はこれが最後ではありませんで、このあと流留(ながる)という万石浦のそばにある地にあるイオンショッピングセンターでも公演がありました。川を渡って不動町のあたりから牧山(まぎやま)トンネルを越えて流留へ。

このへんも震災の被害があったのですが、市の中心部からは離れていて、こちらのショッピングセンターは周辺の雇用の中心となっているところ、ということで、これはFさんの方から公演の依頼がありました。会場はフードコートの中、ということでしたが、むしろゲームセンターの前、と言った方が正しいかな。最初は騒音に驚いたのですが。。じつは今回の訪問の中ではもっとも広い上演スペースで、周囲の環境はともかく、ぬえの本音を言わせて頂ければ、ここで舞うのが一番楽しかったのです。広々としたスペースで「走り回りながら」楽を舞いました。

※トップ画像は「絆ブログ」から拝借しました。