ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

気仙沼・石巻支援公演、行って参りました(その1=プラネタリウム公演の準備)

2012-02-17 05:03:59 | 能楽の心と癒しプロジェクト
「能楽の心と癒しプロジェクト」、2月の厳冬期にまたまた東北訪問公演に行って参りました。ぬえにとっては通算5度目の訪問旅行です。あ~あの優しいおばあちゃんたちにまた会えるのね~♪

今回は稽古能の翌日に出発、帰宅翌朝が申合、そして昨日が東京で本番の公演日。『高砂』のツレと『千手』の主後見という大役を頂いている中での3泊4日間の訪問でしたが、どれも大過なく勤めることが出来まして、ようやく安堵しております。さすがに昨日は疲れを感じたけど、舞台に粗相はなかったので、ようやくひと仕事終えた実感を持ちました~。

また今回の訪問では被災地ではない場所…現実には震災の被害がなかったわけではないけれど、津波による激甚被害はなかった大崎市で、なんとプラネタリウムでのチャリティ公演をしたのが、何といっても印象的でした。ここでは初めて「地吹雪」というものを体験したし。。 また初めて気仙沼市の仮設住宅での公演を行い、石巻でも仮設商店街での公演がありました。そうして3/11を超えて、次の段階に進もうとしている被災地の現状も いろいろ教えて頂いて帰って参りました。前回と比べれば短い滞在日数ではありましたが、それでも新しい友人も増えて、大変実りのある滞在だったと考えております。

それではご報告のはじまり~

2月10日(金)

朝7時に笛のT氏と待ち合わせて一路 東北へ。今回も石巻のVC(ボランティア・センター)から災害派遣従事車両の認定を頂くことができました。これがない時は高速道路の深夜割引を使って夜中に走ったものですが。。しかし厳冬期の今は深夜の運転は事故と隣り合わせだから、昼間に走れるようになったのはありがたいことです。

それにしても東北も遠いかと思っていたが、今では走り慣れた道になっちゃって、距離に苦痛を感じることはなくなりました。…がしかし、宮城県よりも むしろ福島県の方が雪深いのですね~。殴りつけるように雪が降る中を走るような感じ。去年の冬に高速道で多くの車が立ち往生してしてしまって、ガソリンが切れて暖房が止まると大変、ということで自衛隊がしゅつどうする騒ぎになったのも、磐越道の猪苗代付近ですし、会津若松は雪のために陸の孤島になることがあるそう。東北道ではさすがにそこまでの雪はないようですが。。

まずは2日後に行うプラネタリウム公演の準備のために大崎市の「パレットおおさき」へ正午頃に到着。この年末にも打合せで訪れているのですが、今回は笛のT氏が自前で(!)照明器具やらピンマイクやらを持ち込んでのセッティングです。

もともとプラネタリウムには照明施設なんてあるわけないのですが、といって照明がないと能を演じてもさっぱり見えない。。当初は能の上演時には星の投影はやめて、薄暗がりの中で上演するつもりだったのですが、年末の打合せで、投影するプラネタリウムのドームがあまりに巨大で、下の方で能を舞ってもポツンと寂しく見えてしまうことがわかりました。そこで星の投影はしている中で舞うことにしたのですが、今回の準備で照明を点けると、あらら今度は星がまったく見えなくなってしまいました。

まあねえ。。闇の中で星を見るプラネタリウムと、装束や面の表情を照明で見せたい能とは二律背反。。矛盾。水と油。犬猿の仲。月とすっぽん。ぼくはクマ、車じゃないよ。我泣き濡れてカニと戯る。

でもプラネタリウムの技術者の方がいろいろと工夫をなさって、ついに星空の星座を指し示す矢印のようなポインターを映し出す小さなライトを、空にではなく下に向けることによって微妙な明るさで舞台を照らすことが可能になりました。これなら行けそう。

それからサウンドチェックを行い、なんとか公演のメドがついたのが午後3時。この日は気仙沼でワークショップを行う予定なのでホントは大崎での準備は1時間で終わらせる予定でしたが、大幅に遅れました。それでも上演の成果に手応えは感じることができたので、これはこれで良かったと思います。さてさて急いで気仙沼へと出発しました。