ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆の国市・子ども創作能 おおひと梅まつり公演

2012-02-20 01:27:45 | 能楽
昨日は伊豆の国市の「子ども創作能」の公演がありました。
会場となっている大仁神社では秋祭りの際にも出演させて頂いていますが、冬にはこの梅まつりに参加させて頂いております、そういえば去年は雪が降って大変でした。今年はおかげさまで晴天に恵まれ、しかも暖かかった! 例年にない厳しい寒さの今年にしては大変恵まれた条件での公演となりました。

で、今回の目玉は なんと「子ども創作能」始まって以来、準主役の山木兼隆(平家の伊豆目代で、頼朝挙兵の際に最初の標的となった人物)役を 小学1年生のたけちゃんが勤めたことでした。

元来「子ども創作能」では5~6年生が立ち方を勤め、主役の頼朝、準主役の兼隆など主要な登場人物は6年生が勤めることになっています。ところが近年、やや出演者が少ない年が続いていることと、去年は正式なものだけで5回も公演があったことで、段々みんなもお役に慣れてきたし、また数多い公演ならば1回ぐらいはあまり学年にこだわらずに大抜擢の配役もあっていいかな、なんて思っていました。

そんな事を実際に子どもたちに言ったのは去年の夏過ぎぐらいだったかなあ、そしたらすぐに たけちゃんが「ボク、兼隆やりたい~」と言い出したのでした。ええ~~、学年にこだわらない、と言ってもよりによって1年生の たけちゃんかいっ …でもまあ、この子は1年生の中でも利発な子だし、こういう ちびっこにはありがちな、舞台当日にお客さまを見て突然怖じ気づいて「やりたくない」と言い出したり、失敗したら泣き出しちゃって、あとは何もできなくなる、というような「事故」も起こさないのでは、とこれまでの稽古の経験から考えたので、もう、どうなることかとは思ったけれど、たけちゃんにお役をお願いすることにしました。

いや、稽古は順調でしたね。もう、こういう大抜擢の公演なので、多少の間違いがあっても目をつぶって叱ったりしない。年に1回くらい、成果よりも出演者が楽しむ催しがあってもいいじゃないか。…そう思って稽古を始めたのです。ところが、段々と たけちゃんは めきめきと上達してきて。元よりパパ譲りで運動神経は抜群で、身長がちっこいところを除いてはほとんど上級生と遜色ない成果を見せました。

そうなってくると、セリフが少し たどたどしかったり、上級生ほどじっと動かないでいる事など年齢的に難しい点も、かえって魅力に見えてくるから不思議。あとは記憶力の柔軟さかなあ。なんせ学校では「花」とか「山」とか、そんな漢字を習っているレベルの子が古典の文語のセリフを覚えて謡うんだから。本人にとってはほとんど呪文みたいなものでしょう。ところが当日は楽屋で頼朝や地謡の文句まで口ずさんでる。。おかげで当日の本番ではいきなり「これは先の兵衛佐源の。。」と言い出して、あやうく歴史を変えてしまうところでしたが (^◇^;)、ま、これはご愛敬。すぐに本来の自分のセリフに戻りました。でもまあ、その記憶力は驚くべきことだよなあ。

すんません、当日は ぬえも出演していたんで画像は前日の申合のときのもの。
まずは源氏のみなさん。右から頼朝のユイぴ、北条政子のカホちん、時政のみーちゃん。



平家は兼隆のたけちゃんと郎党・堤信遠のサラ。



カホvs平家武士のサキべ。サキべはやっぱり1年生ですが立派に勤めていました。



さて上演も無事に終わりましたが、そのほかこの「おおひと梅まつり」は、冷静に考えるとおよそ考えられないくらい豪華なお祭りなんですよね。「子ども創作能」だけでなく、なんと雅楽まで上演されるのです。これは大仁神社の神主さまが雅楽に熱心で「大仁雅楽会」としてこの「梅まつり」で上演されるからです。そればかりか、子どもたちも雅楽に参加させていて、今回は「浦安の舞」と「迦陵頻」の舞姫として小中学生が出演しました。そしてなんと、「浦安」の舞姫は「子ども創作能」にも出演しているリサべなんですよね~。



こっちでは楽屋でカホちんが雅楽会の方から笙の吹き方を教えて頂いていました!



リサべが出演する「浦安」、去年はビデオを撮りそこなったので、今回はリベンジ! 無事に扇舞と鈴舞の両方の舞をビデオに収めることができました~



子ども能も雅楽も終わったところで子どもたちは梅の花を写生に行きました。みんながんばったね~。今回は東北旅行と師家の催しでのお役があったので ぬえから子どもたちへの「ごほうび」を買う余裕がなかったですが、次回の稽古日までには用意しなきゃ~~

公演が終わって すぐに東京に帰る…ところですが、まだまだ動き足りない (__;) 子どもたちに連れられて「リバーサイドパーク」という巨大公園へ。





「缶蹴りやろうよ~」「先生、鬼ね!」「どろけいやろうよ~」「先生、泥棒ね!」…いい加減にせんかい、おまえら!!(-_-メ)