ファミレス社会
正月三が日を一人で過ごす人が33.4%。東京港区の驚くべき数字ですが、都市部だからというわけではありません。山形でも26.7%。島根でも似たような数字があるのではないかと思います。(2012年、明治学院大学河合教授の調査)
孤独死という言葉に象徴されるように、我が国は、この25年間でファミリーを持たない無縁社会化したとのこと。当時、フランスより家族関係が良好だったが、今は逆転しているとか。
アンケートによれば、30代で家族はストレスと感じる人が6割という時代ですからね。
そんな現状もあり、樋口恵子先生は、ファミレス社会という造語を使っていらっしゃるようですが、外食産業ではなく、ファミリー(家族)のない社会ということなんですね。
この話は、昨年9月に亡くなられた宇沢弘文先生の業績から、新しい社会の仕組みはどうあるべきか学ぼうというフォーラムで、神野直彦氏が特別講演で話されたこと。
宇沢先生は、米子市出身の世界的に著名な経済学者です。初めて知ったのは2002年、米国にいる同級生から宇沢先生の新聞記事の紹介を受けた時。底知れぬ感動を覚えたことを思い出します。
つながりを紡ぎだす
この話が、昨日の鳥取県立図書館のシンポジウムにぴったりと重なるんですよね。
我が国は、パックス・アメリカーナによって、無縁社会化。宇沢先生の経済学の根本は、生命主義・共生主義・参加主義。今、ネットワークを結いなおすことが最も大切。
若手図書館員の皆さんのクロストークのキーワードはつながりを紡ぎだす図書館。人を巻き込み、マスコミを巻き込み、お金のない中で図書館を作ってきた。楽しみながら。
その姿は、地方創生のフロントランナー。今更ですが、政治が後追いしてきた。
自治体のバロメーター
昨日は、最初に、「つながる図書館」著者の猪谷千香さんによる記念講演「つながる図書館からみえたもの~図書館の未来」。現場をつぶさに見た話ですから、説得力あり!
話題の武雄市立図書館は行っていましたが、彼女の本を読んで、千代田区立図書館、武蔵野プレイスと伊万里市民図書館は行ってみましたが、羨ましい~~~!特に伊万里かな。
クロストークで心に刺さったキーワード。
街づくりのエンジンになりたいと図書館を作った。地域に入って情報をとる。図書館に来たらわかってもらえる。皆でやると参加者の満足度が高まる。図書館の枠を広げるのは理屈抜きで楽しい。場として魅力的。図書館は自治体のバロメーター。
全く市町村図書館支援をしない県立図書館があるというのは驚き!
鳥取は徹底していますが、島根県立は?海士の磯谷さんからはとても高い評価。頑張っていてくれる!って、正直嬉しかった!
宇沢先生に学ぶ時代
最後に、かつて尋ねた日本一の呼び声高い浦安図書館長だった常世田現立命館教授に挨拶に行くと、図書館は、地方税収を増やすこともできると一言。そんな意識を持てるのか?
これも、宇沢先生の社会的共通資本として教育を位置づけ、図書館を位置づけることができるのかどうか?
目的と結果を取り違えないこととの話がありましたが、欲望の充足を優先させるのか、人間の心を優先させるのか問われています。経済学の原点は人間。宇沢先生に学ぶ時代です。
二日間の鳥取県立図書館25周年記念シンポジウムに参加しました。
一番の目的は、あの藻谷浩介さんが地域活性化と図書館の役割について何を語るか、それを聞きたいというのが一番でしたが、やはり期待を裏切らない。
お題は、「地域活性化を支援する図書館」。
藻谷さんの話で一番心に響いたのは、誇りなんですね。彼は、地域活性化とは経済を含めたハード的な充実ではないだろうと。
地域活性化って、と提示したのは、①人口が減らなくなること②若者が戻ってきて子どもが生まれつづけること③誇りをもって地域を残すこと。
僕は、農業の衰退は、ひとえに農業者が農業を経済としてとらえ、日々の喜びを自分の誇りとして、子や孫に伝えなくなったことではないかと思ってきました。
そこにぴったり合いました。ただ、人口が減っちゃダメなのか?っていう思いがあります。全体や都市部で人口が減ったって、エネルギー需給の改善につながるだろうしGOODでは。
誇りを持って地域を残すため、図書館機能が必要不可欠との話を、コメンテーターや専門家があいまいな話を持ち出して不安を煽ることがいかに多いのか、事実の裏付けとしての統計数字を示しながら話してくださいました。
日本の足を引っ張る限界について、問題の本質はヒト・モノ・カネ・情報の循環・再生の不全にあると指摘し、図書館の使命は情報の循環・再生を支援することであると。
そう考えると、地域の再生には図書館は不可欠だし、いかに活用できる人を育てることができるか、そこに日本の未来を開く大きなカギの一つがありそうですね。
二日目の話は、これまた目から鱗の素晴らしい話が満載。それは、後日。