1
「信じ難いこの教え、よくぞ説かれたまひける。仏なりけり、仏なりけり」不意にこの句が浮かんできました。
2
なぜ信じ難い教えを信じ難い衆生(代表はわたし)に説かれたか。曰く、仏だったからである。そうすることが仏の実践だったからである。
3
なんにもない空疎な悪世だと捨て鉢になるところだった、危ないところだった。そうではなかったのだ。わたしと仏さまの濃厚な、断ち難い結びつきがあったのだ。切ろうとしても切れない結合が。
4
仏さまのお目当てはこのわたしである。わたしの救出劇を終わらないでは、仏さまは絵に描いた餅、絵に描いただけの仏さまである。であれば、畢竟、この世でのわたしのお目当ても仏さまであらねばならない。
5
冬。静かな舞台に仏さまとわたしが立っている。雪が降っている。