妻を見ています/妻を見ながら/この夫は内心しめしめと思っています/夫のこの内心を/妻は一欠片(ひとかけら)ほども覗けません/だから、しめしめなのです/
いまお昼ご飯時です/日の差し込む南の縁側に座しています/ここだとピクニック気分になれます/今日は釜揚げうどんでした/丼の下に鰹節を2袋敷いて/そこに熱々のうどんを注いであります/
妻は夫の内心を覗けません/だから夫は妻から独立しています/軽々と自由を楽しんでいます/もちろん夫も妻の内心が覗けません/どちら側もベールで包んでいます/隠しておいて/想像に委ねさせて/それで知らんふりをして暮らしています/
妻も夫も秘密の蔵を幾棟も建てています/白状をします/妻を一生なんて愛せません/愛は束縛を強要します/束縛されているのが嫌なのです/互いにそうでしょう/夫はぺろりと舌を出しつつ/ただただ普通に/普通の平穏を装って/お昼のうどんを食べています/
夫は己の嘘っぱちに耐えかねて/抜け出して行きます/ぶらりと/そう/ぶらりと旅に出て行きます/夫は嘘っぱちを生きています/妻の夫ではないときは/ぶらりと旅に出ています/愛さねばならない愛からは卒業をしたいのです/