なまめかしいことを書いてみるが、老いたお爺さんにはなまめかしいところがない。まったくない。枯木(こぼく)だ。「枯れ木に花が咲く」などという古いフレーズがあるが、この男には通用していない。
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落花もて一日(ひとひ)化粧(けせう)をする枯木(こぼく)
山鳩暮風
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桜の花が風に散っている。朝から夕方まで。うららうららの霞の空に立っている枯木に、落花が纏わり付いて、美しい化粧になった。
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お爺さんはわざとわざとなまめかしい題材を選んで俳句を作る。どれたけそんな歌を歌おうと、お爺さんがなまめかしくなるわけではないのに。回りの春がそれをお爺さんにさせてしまう、しつこく。
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