形見とて何か遺さむ 春は花 夏ホトトギス 秋のもみじ葉
大愚良寛禅師
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わたしが此処にこうして人の暮らしをして生きていた、という事実が消えて行ってしまう。死とともに泡になってしまう。それがなんだか惜しまれてくる。で、なにがしか形見になるものを遺しておきたい衝動に駆られる。
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良寛禅師は愚か者に徹しておられたので、その自己欲求を払い下げになさったようだ。
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春になると桜が咲く。さまざまにさまざまな花が咲く。夏に時鳥が渡って来て鳴く。秋に全山がまっかにモミジして美しくなる。
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これを繰り返す。100年も1000年もこれを繰り返す。あたりまえに繰り返す。平和に長閑に。これでいい。
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そこにわたしの形見は無用だ。そこには、「わたしが生きていた事実」も消えているが、それでいい。消えていていい。
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なにごともなし。なにごともなし。なにごともなし。生死なにごともなし。驕る心の何事もなし。
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