ある城跡
2007-09-22 | 事例
城山公園に行くには橋を二つ渡ります。内堀と外堀です。
内堀の中は、石垣を除いては城跡はなく、今は市の公園となっており、
桜の名所です。
最初の橋と次の橋の間に小さな土地が城跡を取り巻いていますが、
此れが全部個人の土地になって居ます。何で個人の土地になったのか
解かりませんが、其処にSの土地がありました。150坪が自宅、
地続きで300坪が畑です。
自宅は住まいと納屋に分かれておりました。納屋と言っても機の工場の
あとです。そんなに古くありません。平成になってからでしょう。
Sは此の家を立ち退きを責められております。
一人息子が平成の8年、工場を開いたのです。
融資は隣町の地元の信販会社に依頼しました。頑固なSは当初は物凄く
反対しましたが、結局はグータラ息子の立ち直りを期待して、
保証人となり、自宅部分だけ担保も入れました。
口車で乗り出した工場経営、ノウハウなど有りません。近所に教えてくれる
同業者も居ません。アット言う間に倒産。借りた額のほかに、今までの
費用分が損をして居ります。大損です。息子は家を出て音信不通に
なりました。学童期の子供も居ますからその気になれば判るでしょうが、
隣町でタクシーの運転手をやって居るという噂も聞きました。
信販会社は、毎月20万円をきちんと納めてくれる彼に何も文句も
言いませんでした。しかし、年金暮らしの彼にとっては、払える額では
ありません。20万は年金では足りません。
其れまでの蓄財が無くなった3年目から途絶え勝ちになったのです。
信販の担当者が足しげく通い出したのはその頃からです。
こんな頃Sはある人に相談して居ます。本屋で「電話無料相談します」と
知った名前です。
「今の残高と返済ならば、金利なしで15年掛かります。それだけSさんが
払えるとは思いません。自宅は必ず取られます。其れより隣の畑を
守ってください。自宅だけでは全然追いつきません。調整地区で
農地ですから簡単に売れないでしょうが場所が場所ですから
危ないです。」
そして「詐害行為になった時はなった時で考えましょう。」と名義を
変更する方法と抵当権をつける方法を教えました。
「Sさんも息子さんも何も資産はないし収入もありません。そりゃあ、
訴訟や預金差押くらいありますが平気です。此の不動産さえ片が付けば
終りです。」
此のときにやっておけば、後日畑は助かったかもしれません。
Sはやりませんでした。
お金もありませんでしたが、其れより、そんなに簡単に電話だけで
助かる話ではない、と自分で決めていたのです。
ついに20万は続かなくなりました。蓄えは完全にありません。
20万は月5万になり、其れも途絶え勝ちです。
信販の回収員が頻繁に訪問するようになりました。
「自宅を手放す。」そんな言葉が回収員から出た時に」
Sは烈火のごとく怒りました。「由緒ある此の地を俺の代で
手放すわけにはいかん。」と云うわけです。
回収員はSの留守に来て彼の妻を口説いている様子です。
「Sさんが自分から此の土地を売却してくれれば、残債務が残っても
其れは全部放棄して後腐れのないようにします。Sさんの債権は、
もう直ぐ管理部に移りますが、其処に移れば隣の畑だけでなく
その他の資産も洗われて全くの無一文になりますよ。」
妻は夫に薦めようと思ってもSは聞きません。それどころか勝手に
回収員と話す妻を強くなじる状態でした。
此の頃Sはやはり本屋で知った前回とは別な人に電話をして居ます。
どの人は言いました。
「この事件、もう時効になって居ると違いますか。私の本に
詳しく書いて有りますから、1度読んでください。」
本当の無料相談とわかれば冷たいものです。それでもSは本で調べました。
その結果此れは絶対に時効になって居ると思い込みました。
時効の援用の文例はその本にもありました。
Sは時効の援用をしたのです。
息子は借りて1度も返済しておりません。もう7年以上になるでしょう。
Sが保証人として払っているだけです。振込用紙は郵便局で自分で
貰い全部自分の名前で払っています。控えが残っているには半分です。
その控えの振込人は全部自分の名前です。
しかし負けました。
Sが持っていない控えに何故か1枚息子の名前があったのです。
Sの筆跡です。その時に何故Sが息子の名前を書いたか全然記憶に
ありません。コピーを見せられてSは本に書いてあったことを
思い出しました。1回でも本人が払うと時効は中断し、
時効にはなりません。
信販の担当者は怒りました。
「私はお二人のことを考えて自宅の売却を薦めていたのに、
こんな借金をゼロにする事を考えて居たなんて。管理部に回します。」
それから間もなくです。
支払い督促の訴状が来て、放っておいたら隣の土地が差押になりました。
其れと平行して自宅は競売です。
時効の件はSが間違って書いたと争えば、あるいは勝ったかも知れません。
しかし相談に行った弁護士には、以前の一寸した相談料も
未払いになって居ます。体よく断わられただけです。
競売開始の通知がきてから開札まで、Sは毎日裏山に上り、
城跡を眺めていたそうです。
自宅は例の回収員の親戚の者が落としたそうです。
Sのその後の足取りは近所の者も知りません。
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内堀の中は、石垣を除いては城跡はなく、今は市の公園となっており、
桜の名所です。
最初の橋と次の橋の間に小さな土地が城跡を取り巻いていますが、
此れが全部個人の土地になって居ます。何で個人の土地になったのか
解かりませんが、其処にSの土地がありました。150坪が自宅、
地続きで300坪が畑です。
自宅は住まいと納屋に分かれておりました。納屋と言っても機の工場の
あとです。そんなに古くありません。平成になってからでしょう。
Sは此の家を立ち退きを責められております。
一人息子が平成の8年、工場を開いたのです。
融資は隣町の地元の信販会社に依頼しました。頑固なSは当初は物凄く
反対しましたが、結局はグータラ息子の立ち直りを期待して、
保証人となり、自宅部分だけ担保も入れました。
口車で乗り出した工場経営、ノウハウなど有りません。近所に教えてくれる
同業者も居ません。アット言う間に倒産。借りた額のほかに、今までの
費用分が損をして居ります。大損です。息子は家を出て音信不通に
なりました。学童期の子供も居ますからその気になれば判るでしょうが、
隣町でタクシーの運転手をやって居るという噂も聞きました。
信販会社は、毎月20万円をきちんと納めてくれる彼に何も文句も
言いませんでした。しかし、年金暮らしの彼にとっては、払える額では
ありません。20万は年金では足りません。
其れまでの蓄財が無くなった3年目から途絶え勝ちになったのです。
信販の担当者が足しげく通い出したのはその頃からです。
こんな頃Sはある人に相談して居ます。本屋で「電話無料相談します」と
知った名前です。
「今の残高と返済ならば、金利なしで15年掛かります。それだけSさんが
払えるとは思いません。自宅は必ず取られます。其れより隣の畑を
守ってください。自宅だけでは全然追いつきません。調整地区で
農地ですから簡単に売れないでしょうが場所が場所ですから
危ないです。」
そして「詐害行為になった時はなった時で考えましょう。」と名義を
変更する方法と抵当権をつける方法を教えました。
「Sさんも息子さんも何も資産はないし収入もありません。そりゃあ、
訴訟や預金差押くらいありますが平気です。此の不動産さえ片が付けば
終りです。」
此のときにやっておけば、後日畑は助かったかもしれません。
Sはやりませんでした。
お金もありませんでしたが、其れより、そんなに簡単に電話だけで
助かる話ではない、と自分で決めていたのです。
ついに20万は続かなくなりました。蓄えは完全にありません。
20万は月5万になり、其れも途絶え勝ちです。
信販の回収員が頻繁に訪問するようになりました。
「自宅を手放す。」そんな言葉が回収員から出た時に」
Sは烈火のごとく怒りました。「由緒ある此の地を俺の代で
手放すわけにはいかん。」と云うわけです。
回収員はSの留守に来て彼の妻を口説いている様子です。
「Sさんが自分から此の土地を売却してくれれば、残債務が残っても
其れは全部放棄して後腐れのないようにします。Sさんの債権は、
もう直ぐ管理部に移りますが、其処に移れば隣の畑だけでなく
その他の資産も洗われて全くの無一文になりますよ。」
妻は夫に薦めようと思ってもSは聞きません。それどころか勝手に
回収員と話す妻を強くなじる状態でした。
此の頃Sはやはり本屋で知った前回とは別な人に電話をして居ます。
どの人は言いました。
「この事件、もう時効になって居ると違いますか。私の本に
詳しく書いて有りますから、1度読んでください。」
本当の無料相談とわかれば冷たいものです。それでもSは本で調べました。
その結果此れは絶対に時効になって居ると思い込みました。
時効の援用の文例はその本にもありました。
Sは時効の援用をしたのです。
息子は借りて1度も返済しておりません。もう7年以上になるでしょう。
Sが保証人として払っているだけです。振込用紙は郵便局で自分で
貰い全部自分の名前で払っています。控えが残っているには半分です。
その控えの振込人は全部自分の名前です。
しかし負けました。
Sが持っていない控えに何故か1枚息子の名前があったのです。
Sの筆跡です。その時に何故Sが息子の名前を書いたか全然記憶に
ありません。コピーを見せられてSは本に書いてあったことを
思い出しました。1回でも本人が払うと時効は中断し、
時効にはなりません。
信販の担当者は怒りました。
「私はお二人のことを考えて自宅の売却を薦めていたのに、
こんな借金をゼロにする事を考えて居たなんて。管理部に回します。」
それから間もなくです。
支払い督促の訴状が来て、放っておいたら隣の土地が差押になりました。
其れと平行して自宅は競売です。
時効の件はSが間違って書いたと争えば、あるいは勝ったかも知れません。
しかし相談に行った弁護士には、以前の一寸した相談料も
未払いになって居ます。体よく断わられただけです。
競売開始の通知がきてから開札まで、Sは毎日裏山に上り、
城跡を眺めていたそうです。
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