かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

争いに勝てない実例

2007-09-06 | 事例
新幹線の止まる街、しかし静かな住宅地です。
Sは早くから此処に住んで居ました。地価下落と云っても、此の不動産は5000万くらいの価格は付くでしょう。

娘と夫婦の3人暮らし。Sはどうしても此の不動産を守らなければと悩んでいます。
Sは兄の会社のNO2、此の地の工場の責任者です。
その兄の会社がおかしいです。
その時に自宅のことで相談した人が居ります。やり方を全部説明した後、念を押されました。「是非今からやって置きなさい。間際にやっても役立ちませんよ。」と薦められながらも、直ぐに手を打てず、小1年ほど何もせずに放って置きました。50万くらいと、思ったより費用が懸かるため躊躇したのです。しかし結果から見ると此れが仇になって居ります。

Sが自宅の防御策に出たのが、不渡りを出す半年前でした、
この時に漸く動いたのです。
不動産を2000万、結婚30年の彼は、結婚20年の減税を利用し妻に送りました。
残った名義分を担保にして78歳の叔父からお金を借りることにしました。
其れを他立ち人会社に回し、会社は支払いに当てるという処理をしました。勿論造り事です。
そうした処理をすると、彼はもう完全に不動産は助かった気がして安堵したのです。

会社は半年後不渡りを出して倒産しました。
東京の兄の自宅も工場も不動産は全て処分しました。保証人のSには誰もなんとも言ってきません。安心すると同時に鼻高々です。
自分の打った手を、依頼した司法書士にも自慢したのです。

半年くらい経ちました。
第2会社で懸命に動いているSに1通の内容証明が届きました。信金からです。
要旨は自宅の名義を変えたり、担保にしたことは、銀行に払いたくないからやった事でしょう。直ぐに登記を元通りに戻してください。と云うことです。
「詐害行為取り消し請求」と云うのだそうです。
放っておいたら訴状と仮差押の通知が届きました。

前に自宅を守るということで相談した人は「もう此の事件は負けるよ。
其れより裁判にしないで和解を申し込み、安く買い戻すしかないよ。
今ならば相当信金も考えてくれるよ。」と云う意見です。
しかし、会社の弁護士と、地元の古い付き合いの弁護士の二人は一寸違いました。
「奥さんに名義を変えたことは負けるかも知れないな。
しかし担保の方は実際にお金を動かして居り、しかも銀行との争いを
貸した人は知らなかったと云うならば勝つ可能性は充分にありますよ。」
と云うことです。

此れさえ勝てば、たとい競売になっても、安く買い戻す手段は幾らもある。
上手くすれば妻に贈与も認められるかも知れない。こう思ってSは訴訟を
受けて立つことに決めました。
結果論ですから断言は出来ませんが、この時に和解を申し込んでいると、
地元の信金ですし、幹部には顔見知りも居ます。
安い和解金で応じて呉れたかも知れません。しかし事態は裁判と
云うことになりました。

妻の贈与は簡単に負けました。
「長い事一緒に居て二人暮らしと同然の夫婦が、会社の危機を
話し合わない筈がない。奥さんも其れを知っていて贈与を受けたと思う。」
幾ら妻も当人も結婚した当時から30年経ったら名義を分けましょうと
約束していましたといっても裁判官は一顧だにしませんでした。

しかし知人の担保は粘りました。
78歳の叔父は、先ず法廷で「Sの叔父ですね。」と云われた時は目を
むきました。そんな事相手は知る由も無いと思っていたからです。
答え方も若干、しどろもどろでした。弁護士からは云われて居たのに、
叔父に説明不十分なことが影響して居ります。
思いかけなかったのはあの司法書士の証言でした。何でこんな処にこんな人が出たのか解かりません。此れが決め手となりました。
後日、「銀行は司法書士や弁護士とは、殆ど連絡網はある。彼らに仕事を依頼する時は本当に気をつけないといけない。」と聞かされて、あの場面で司法書士が出てきた事に納得しました。

裁判は負けました。叔父は再び法廷に出ることを拒否し、
上告はしませんでした。仮差押の物件は差押となり競売になりました。

法廷で争いの最中、Sは自宅に車庫を作って居ます。
いわゆる執行妨害です。娘の名前でと思ったが、登記は出来ませんでした。
以前から相談した人は「無駄なこと。止めなさい。」の一言です。しかし付き合っている仲間で効果有ると云ってくれた人も居り。その言葉に従ったのです。

競売は簡単に落札されました。車庫など問題にもなりません。
取り壊しの義務だけが残ったのです。

立ち退きも粘りました。強制執行のための調査があるまで粘ったのです。そのために相手が提示した引越料も手に入りません。

今回のSを見ていますと、「感じたことも、思いつきも良かった。ただ彼には直ぐにやると云う実行力が無かった。そして余りにも計算が細かかった。結果後日それ以上を使って失敗している。」と云うようなことになって居ます。

Sみたいな人、多いと思います。
大事な自宅、守れるか失うかは一寸した勇気と心使いが決めると思います。





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借金を資産として処理した時

2007-09-02 | 事例
借りれば借りるほど会社の内容は良くなる。こんな都合の良い事って
あるのでしょうか。会員の経理を教えているある団体の経理マンが、
会員の一人に内緒でそんなマジックを教えました。
一つの会社の悲劇の始まりでした・

Uはその団体では古参で皆から信頼されて居ます。
製造業の彼は廉価で引き受けるために仕事は有るが利益は出ない。
そして仕事があるのが仇となり、お金の動きは激しいという結果に
なって居ます。その中でも未だ若干のお金を貸してくれる銀行が
有りますので、あくまで試算表は黒字を要求されていました。

Uは、銀行が満足に貸してくれないために、毎月の不足の時など、
良く団体内の知人にお金を借りました。知人もUを信頼して都合を
してくれたのです。
返済の約束は守ります。でも借りるお金は増えて行きます。
借りる知人も次第に増えていきます。
全て「仮受金」と云う名目で処理をしていました。

一方経費節減で大きな減給をしましたが、結局は減給額は借りて居ます。
仮払い処理をして居ます。その他仮払いで、多額の経費や、現金仕入れ
など、それに個人から借りたお金の金利など、全部で相当な額のお金を
毎月仮払いで処理をして居ります。

さあ、見かけの黒字は出ていますが仮払金とか仮受金など訳の
解からない費目が増えていきます。銀行は用心してお金を貸さなくなって
きました。其れを団体の経理マンにこぼしたのです。

「簡単です。仮受と仮払いを相殺すればよいです。負債も少なくなり、
資産も訳の解からない資産が消えて、試算表は見違えるように
よくなります。尚今後も続くでしょう。今までの仮受金も全て仮払金で
処理をしたらどうですか。仮受を仮払いの入金として処理をするのです。
何時までも表面に出ずに綺麗な試算表を作ることが出来ます。
しかし個人借入や仮払いも何時かは精算が必要ですから、明細は良く
把握していてくださいね。」

当時Uは教えてくれた人を非常に感謝して居りました。
こんな良い事。人には只で教えられません。
Uは皆が知らない素敵な処理方法を知ったのです。

知人からのお金は何れも5%から7%の金利をつけています。
きちんとして居ますから内緒の貸し手が増えてきます。こんな金利は増え、
しかも本業は芳しくありません。急速に個人借入は増えて居ます。
幾ら増えようが会社の帳簿には何一つ出てきません。

ご多聞にもれず、Uは毎月の精算が出来なくなりました。金利だけ
払っていましたが、その金利も払えなくなりました。金利預かりと
称して書付を渡し、金利は元本に組入れるようになりました。当初は
500万から1000万の間でふらふらしていた残がやがて2000万になりました。
2000万を越すと後は早いです。アット云うまに1億近くまでになってしまった
のです。

こうなるともう誰も貸しません。新規に借りる人も居りません。
団体古参のUに表面切って請求する人も居りませんが、殆ど一斉に
貸さなくなったのです。
どんなに頼んでも、今後の貸し出しは誰も約束してくれません。
逆に返済を催促されるようになりました。

このお金が止まれば、会社の資金もショウトします。Uは今月末、
手形の決済が出来そうもないことに気付いたのです。

勿論個人借りを一切返済しなくて、銀行をリスケをすれば未だ続きます。
しかしUはそのことに気が付いておりません。
銀行に返さないと直ちに競売されて直ぐに何処かに移らなくては
ならないと信じています。

そのような事は直ちに発生はしない事をUに教えてと思っても、
パニクッテ居るUはそうした言葉を受け入れようとはしません。

Uの教えてくれた団体の経理責任者はUに言いました。
「私は決算の時だけ相殺したらどうかと云っただけですよ。そんなこと
常時続ければ何もかも解からなくなって、それだけでも倒産に
結びつきます。それにしても難しいことをやってきましたね。」

いざと云う時に助け合う仲間は皆そっぽを向くどころか敵になって居ます。
弁護士は破産を薦めるでしょう。そうすれば、担保の入っていると
云いながら、折角苦労して手に入れた不動産4軒も失います。
妻が娘が嫁入の時に持って行くと云って買った48回払いの600万の和服セットが守れるか心配です。

Uの頭はおかしくなって居ます。
倒産は必定でしょう。しかしどんな倒産になるか検討付いて居りません。

団体から有力メンバーが消えようとして居ます。
しかし経理責任者と、Uにの貸して呉れたメンバーは何れも健在です。






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