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<経産大臣指定伝統的工芸品> 山梨 甲州手彫印章

2021-04-26 06:38:06 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「甲州手彫印章」

 Description / 特徴・産地

 甲州手彫印章とは?
 甲州手彫印章は、山梨県甲府市、富士吉田市などで作られている印鑑です。印面彫刻業者や販売業者、印材メーカーなどが山梨県内に業者が全て集まっているように、他県には見られない地場産業となっています。
 甲州手彫印章の特徴は、印材に柘(つげ)、水牛(すいぎゅう)、水晶(すいしょう)が指定されている点です。水晶研磨の技術があった甲州地方の特性を生かして、水晶の印章が生まれました。
 印材が柘(つげ)または水牛(すいぎゅう)の場合は、起低刀を用いて文字部分を残すように粗彫りをし、判差刀を使って文字を整えます。印材が水晶の場合はタガネの丸刀を叩いて印面を掘り出し、同じくタガネの平刀を叩いて文字を仕上げていきます。印面は砥石を使って平らに仕上げ、文字は枠内に左文字で描きます。
 甲州手彫印章で大切にされているのは、伝統的な道具と技法の継承です。完成した美しい印影を表現するために、印刀製作も伝承されています。

 History / 歴史
 山梨県の甲州手彫印章は、御岳山系から巨大で良質な水晶が発掘されたことから始まります。1837年(天保8年)には、甲府近郊の御岳に水晶の加工工場が設立されました。加工技術も数多く生まれ、加工職人や業者が増えていきます。板木師の彫刻技術が発達し、印材として水晶をはじめ柘(つげ)や水牛(すいぎゅう)も使われるようになりました。1854年(嘉永7年)の甲州買物独案内などの文献に山梨県の印章産業の発展をみることができます。
 文献には甲府市内に御印版を取り扱う版木師という職人の存在の記載があり、別の文献では草などが混入した珍しい水晶の印材である「極上草入六角」や、水牛の印材の注文の記載などが見られます。当時には既に熟練した職人が存在し商売をし、様々な印材が流通していたことが推察できます。
 1873年(明治6年)の太政官布告によって一般市民にも印章の需要が急に広がり、山梨県独特の出張販売や通信販売によって市場を拡大していきました。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/koshuteboriinsho/ より

 世界でたったひとつのハンコ、甲州手彫印章
 ハンコなんて安くてもいいという風潮のもと、機械でできたハンコが日本中に溢れている。そんな中、ハンコに深い愛着をもち、ハンコの持つ意味を考えながら手で彫り続ける職人が山梨にいる。この道45年の横森省三さんにお話を伺った。

 
 「新しい」伝統的工芸品のもつ歴史
 甲州手彫印章は平成12年に194番目に認定されたばかりの「新しい」伝統的工芸品だ。「認定を受けるために、印章技術が江戸時代からの歴史を持っているということを証明しなければならなかったんですよ」と横森省三さん。早速見せてくれたさまざまな資料から、甲州と手彫印章との関係が見てとれる。「山梨には水晶鉱が見つかったんです。それで江戸時代から水晶細工が始まって、水晶の研磨技術の中で印材も一緒に作るようになったんです。」水晶と印章、そして印伝。山梨で代表的なこの3つの伝統的工芸品はそれぞれの道を歩みながらも親密に関わりあってきた。横森さんのお店、日進印章のショーケースには、水晶でできた印章が印伝のケースに入って売られている。今では「印章王国」の名を欲しいままにする山梨。中学校などの卒業時にもらう印章の9割は山梨での生産だというほどだ。


 ハンコは唯一無二だからこそ、本当の意味がある
 職人は愛着を込めて印章を“ハンコ”とよんでいる。「ハンコが急速に日本に広まったのは明治以降。太政官布告の中で、一般市民、国民はハンコを使えといって以来です。それまで一般市民は苗字もなかったからね。」だがハンコ自体の歴史は鎌倉でも平安でもない、なんとメソポタミア文明の頃からあったのだ。そんな伝統あるハンコの世界も、今や機械化が進んできている。ではなぜ横森さんは手彫にこだわっていくのだろうか。「ハンコは唯一無二でこそ本当の意味があるんです。自分を証明するものなんですからね。機械に読みこまれている文字を使うやり方だと、誰が彫っても「山」は同じ「山」になっちゃう訳ですよ。でも手彫だと、同じ人が何回彫っても決して同じものはない訳ですよね。ハンコというのは2つと同じものがあっちゃいけないっていうのが当然の話だからね。」だからこそ、同一性をつくりづらくするために、あの難しい篆書(てんしょ)が使われているのである。「あなたの財産全部をこれ一つが守っている」ハンコにはそんな重みがある。

 印影を押してこそわかる手彫りの素晴らしさ
 印影。ぜひ一度本物を見てみていただきたい。さて、この手彫印章、印影を見させてもらうとその字の細さと美しい線に、ただただ驚くばかりである。鉛筆よりも細いくらいの文字がハッキリと、美しく赤でうつる。印章そのものを見ただけでは気づきえない繊細な文字の曲線美。これが自分の名前だったら。自分では決して書けないこの文字で、自分の名前を彫ってもらう。それを自分が好きに使える。一枚の紙に押された印影をみただけで、そんなワクワクした気分になれる。
 それにしても、これだけの細い文字をペンでもなく、筆を使って、はじめから左文字(鏡文字)で書くだけでなく、わずかなミスもおかすことなく、この細く美しい文字を彫り上げる。これこそまさに「職人芸」だ。
 横森さんは日本の文字の美しい線を表現してゆく芸術性に心うばわれているという。「仕事とは違うんですが、よく書道展の篆刻(てんこく)の部に応募して、そこで自分の技術を磨いてるんです。」お店の中には力強くて大きな判の作品が飾られている。

*https://kougeihin.jp/craft/1408/ より 


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