アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

良き報酬は満ち足りた心

2008年12月11日 | Weblog
  人はここまで悪くなれるか?

 「オレオレ詐欺」から始まった、一連の「振り込め詐欺」。だまされないようにと、メディアを使った啓発も…、欣ちゃんも出ているんですが…なかなか功を奏せず、被害は後を絶たない。この「振り込め詐欺」および類似した詐欺は、日本、韓国、中国にほぼ限定されている。つまり、欧米では成立しずらい詐欺。このことの「どーして?」の答えは、日本で被害者が後を絶たない理由と一致すると考えます。

 突かれているところは、「家族の情愛」「性善説」「徳を感じて恩を返す」「仁義忠孝を尊ぶ」です。これは、儒教の教えです。詐欺師側は、儒教の教えとしては知らなくても日本人なので、「ここを突けば日本人はだませる」ということは知っている。儒教精神の欧米へは浸透していないため、ここを突かれても簡単にはだまされない。よって欧米では、振り込め詐欺の発想も湧かないし、だまされる人もいない。このように考えます。

 大阪府熊取町で平成15年5月に行方不明になった小学生の家族が、現金をだまし取られていたことが発覚しました。
 「行方不明の子を助けた。犯人から奪回した際に費用がかかった」などと持ちかけ、現金をだまし取った。4年間で総額約8,000万円。この事件も、振り込め詐欺と全く同じ、「子を思う親の気持ち」につけ込んだものです。

 「家族の情愛」「性善説」「徳を感じて恩を返す」「仁義忠孝を尊ぶ」…日本人が基本的にわきまえていなければならないものでした。それが次第に失われていることに危機感をいだいていました。ところがそれを逆手に取って、「詐欺」を働く輩がいる。いわば、国賊です。憤懣やるかたないです。

 だまされないためには、「家族は他人だよ」「人間は、みな腹黒い」「徳なんて感じなくてもいいし、恩がえしなどもってのほか。鶴でもあるまいし」「仁義?ヤクザじゃないんだから。忠孝?ネズミじゃないんだから!」と、教えるといいことになります。それでは家族も社会も崩壊です。
 「足る以上の、お金をほしがる」…これを人の心から排除し、儒学の教えの流れをくむ日本人の心の基盤を取り戻さなければなりません。

 「ヴェニスの商人」…アントーニオ、バサーニオ、シャイロック…懐かしい。…裁判の場面。バサーニオの恋人ポーシャが、男性の裁判官に変装して(この発想がシェークスピア!)、「証文の通り、肉1ポンドを切り取るがいい。その際に例え一滴でもキリスト教徒の地を流せば、シャイロックよ、お前の土地と財産はヴェニスの国家に没収される」シャイロックは絶句して逃走。 そしてポーシャは、次のセリフで締めます。「良き報酬は金にあらず、満ち足りた心にあり」と、いうわけで、シェイクスピアもここを突いています。
 …「満ち足りた心」というと、老子の「足るを知る」です。そして、我が、「裸にて生まれてきたに何不足」へと。