アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

コギリ奏者カクラバ・ロビさん

2008年08月29日 | Weblog
   コギリ奏者カクラバ・ロビさん 

 弱点と欠点が服を着て世にはばかるっている還暦パパですが、特に弱いのが「音楽」…。思い出として、小学生の頃、学芸会の器楽合奏ではいつも指揮者だった。そりゃ凄いって?何も凄くないんです。楽器という楽器、全て弾けない、吹けない、たたけない…。カスタネットもダメだった。そのため、担当の先生は、私を楽器を演奏する必要がない「指揮者」にしてくださるのでした。楽器の演奏ができないのに指揮は無理だろうって?大丈夫!誰一人指揮者なんか見ていませんから、適当ーで、いい加減でもクレームゼロ。三拍子なら、タクトで空中に三角形を描き、四拍子なら、四角形を描く。気楽な稼業でした。

 我が子のピアノ教室を参観したとき、先生がけん盤を叩くと、子どもが、「ド」とか「ファ」とか当てる・・・。人間の耳って凄いなあ、と感心しました。少なくても、私はそんなもん分かるわけがない!けん盤に限らず、先生がその辺にあるものを叩いて音を出しても、「ラ」とか「レ」とか答えている。ありえない。ここで思い出すのが、カクラバ・ロビさん。

 およそ、20年前のことです。西アフリカにある、ガーナ共和国の、民族打楽器のイベントがありました。ガーナから当時は無名だった、カクラバ・ロビさんともう一人が来ていました。私は、通訳の手伝いとして呼ばれておりました。このときは、大汗をかきました。なぜか?ロビさんの英語なんですが、学校教育は英語で受けたそうですが、母語が現地語(アカン語、モシ・ダゴンバ語、エウェ語、ガー語など、部族によって言葉が違う…)ということもあり、なかなか聞き取れず、何度も確認しなければなりませんでした。来日当初から随行している通訳は、かなり適当にやってましたのでこちらも少しは気楽になりましたが。

 ロビさんは、ガーナのロビ族のコギリの名手(木琴のような民族楽器。ギリとかジリとか呼ばれ、形状によってコギリとか、なんとかギリとかに区別される。オオギリというのはないです。オオギリがあれば、桂歌丸師匠に演奏していただかなければね。共鳴部は、ひょうたん。大きなひょうたんを5~6個けん盤の板の下に吊してある。ひょうたんは東洋のものと思い込んでいましたが、アフリカに立派なひょうたんがあることが分かりました。缶詰の空き缶もつけてありました←コレホント)の奏者。ドイツ人の興行主がロビさんの演奏を聴いて、「この奏者を世界的に売りだそう」と考えました。

 世界的に売り出すためには、ガーナから外へ出なければならない。そのためには、パスポートが必要。そのためには、戸籍が必要。名前も必要・・・。
 つまり、20年前のガーナには、名前も戸籍もない人がいたのです。全国民がそうだったのか、一部がそうだったのかは不明です。私の感触では、大部分が、名無し、戸籍なしだったと…。
 カクラバ・ロビという名前があるじゃないかって?実は、海外デビュー用に急遽つけた名前なのです。彼は、小柄なので、「カクラバ(のみ)」と呼ばれていました。戸籍取得のため名を付けるにあたり、ロビ族のカクラバだから、「カクラバ・ロビ」としようとなったのです。
 この20年で、「世界的な民族音楽家」と、いわれるようになったのですから、アフリカン・ドリームですね。ロビさんは、昨年なくなりました。一周忌をしめやかに行った日本人アーティストも多数おられたとうかがっています。世界的な知名度になっていますが、名前のいきさつや戸籍のことなどを知っている人って少ないでしょう。自慢かって?少しね。本人から、「大蛇は食べないけど、小さいヘビは食べるんだ」と、聞きました。辛意のが好きということでしたので、一味唐辛子を勧めると、真っ赤になるほどかけて、「うまい、うまい」と食べておられました。七味唐辛子は、不評でした。

 ロビさんの演奏を聴いた後、「コギリ」を作りました。木を削って…早い話が、木琴の親玉みたいなものを作ったのです。削った木を叩いて、「これは、ド。これはレ。これは、ミ…」と、並べていきました。
 そうなんです。木を叩いて、ドレミファが分かってしまうんです。参加した子ども達の中にも分かる子がいて…音痴の私は出る幕皆無。驚きましたよ。

 「絶対音感」という言葉があります。定義が難しいので、迂闊に使うと、こっぴどくやっつけられそうです。庶民的な絶対音感は・・・
1 楽音や一般の音の音名を答えられる
2 和音の構成音も反射的に音名を答えられる
3 楽曲を記憶するのが速い
4 耳で聞いただけで、楽譜なしで即座に弾くことができる
 こういう人達、私は尊敬します。なぜか、ドもラも同じに聞こえる私とは、別の世界におられる方々ですから。尊敬するしかありません。
 絶対音感を持つ人は、「BGM・チャイム・駅の発車の音楽などが全て階名で耳に飛び込んでくるので聞き流すことができないので困る」と・・・。誰にでも悩みはあるものなのですね。
 「15,16,17と私の人生暗かった」と、歌った歌手の娘さん…宇多田ヒカルさんは、絶対音感の持ち主と週刊誌に載っていました。本人は、「生活音まで、ドレミで聴こえるって、いかがなものでしょう」と、言下に否定していましたが、それに近いものはお持ちのようですね。

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