そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「私家版・ユダヤ文化論」 内田 樹

2008-05-29 22:46:29 | Books
私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)
内田 樹
文藝春秋

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自分は、ユダヤ人のことについてほとんど何も知識を持たず生きてきました。
もちろん、ホロコーストのことは知っている。
スティーブン・スピルバーグがユダヤ系だとか、米国のネオコンと呼ばれる人たちにユダヤ人の勢力が影響しているといった話も聞いたことはある。
が、どれも断片的な情報ばかりで。

そういう身であまり偉そうなことは云えないんだけど、この本の大部分は著者のオリジナルな議論というよりは、サルトルのユダヤ人論や「日猶同祖論(※)」や19世紀フランスの反ユダヤ主義者・モレス侯爵の生涯など、過去の言説や歴史の振り返りがほとんどを占めているような気もしなくはありません。
(※)日本人はユダヤ人の末裔だ、という主張のこと。そんな荒唐無稽な話が真剣に語られていた時代があったなんて、本当に驚いた!

そうだとしてもこの本は面白い。
基礎知識の無い身にとって「ユダヤ人とは」「反ユダヤ主義とは」という話が新鮮に響いたということもあるけど、やはり何と言っても著者の流麗なレトリックを駆使した文章の卓抜さに支えられているところは大きいと思う。

大部分は過去の言説の紹介、などと書いたけど、終章の最後2節ほどは著者オリジナルの議論が展開されます。
ユダヤ人は「何故」知的なのか、そして、「どこが」知的なのか、について。
この部分がまた読んでてよくわからんのです。
書いてあることが正確に理解できない、ということもあるけど、どうして著者がそういう結論に至ったのか、その「飛び具合」に着いて行けない、というか(著者自身「暴走」だと認めてますが)。
それでも何となく分かったような、読んで一つ頭がよくなったような気分にならされてしまうのが、内田マジック。
って、褒めてんだかなんだか分からなくなってきましたが。
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