傑作短編集〈第1〉或る「小倉日記」伝 (1965年) (新潮文庫)松本 清張新潮社このアイテムの詳細を見る |
松本清張の初期の短編集。
推理小説ではありません。
12編収録されていますが、ストーリーには共通するところが多く、いくつかのタイプに分けることができます。
1つのタイプは、恵まれない境遇に生まれ育った主人公が、強烈な反骨心と執念で学芸の分野でのし上がっていく人生を描いたもの(実在の人物をモデルにしたものが多いらしい)。
もう1つは、しがない市井の人間が、ちょっとした人生の冒険に乗り出したところ、それが裏目に出て危機に陥っていく話。
(これらに分類できない編もありますが。)
いずれにしても、不遇な人々が一瞬夢を見ながら報われないような話ばかりで、読んでいて楽しい気分になったり、ワクワクしたりするような小説ではありません。
それを怜悧な筆致で紡いでいくもんだから、読んでいるこっちもだんだんサディスティックな気分になってきて、結構クセになるものがあります。
ラストの結び方が簡潔なところがまたいいんですよね。
余韻を持たせない潔い千切り方がなかなか切なくて心地いいです。