そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「僕の見た「大日本帝国」」 西牟田靖

2009-08-25 23:25:36 | Books
僕の見た「大日本帝国」
西牟田靖
情報センター出版局

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先日読んだ「誰も国境を知らない」の著者の前作。

サハリンをバイク旅行に訪れた著者が、流暢な日本語を話す現地の老人に出会い、今は何もない山中の、日本統治時代に神社が在った場所に立つ鳥居と遭遇したことをきっかけに、足かけ4年をかけてかつて大日本帝国が統治していた広大な地域(サハリン、台湾、韓国、北朝鮮、中国東北部、ミクロネシアの島々)を旅して、日本統治時代の足跡をたどっていきます。
そして、この旅の途上、韓国から竹島への船旅ツアーを経験したことから、次作「誰も~」の国境を巡る旅に繋がっていきます。

著者は、この旅を経験するまで、大日本帝国時代の歴史に関心を持ったこともなかったということで、最初のほうはかなりフレッシュな感覚をもって各地域の人々や風景に接していきます。
導入部的要素が大きい分、読み物としても正直次作ほどの面白味は感じられないのですが、それでも旅を重ねるうちにディープな領域に踏み込んでいき、終盤の中国東北部編、ミクロネシア編に至っては、戦争と死の匂いが紙面から漂うようで、かなり重たい読み応えがあります。
ノモンハンの旧戦場を訪れた際に著者が感じた虚しさがとても印象的。
そして、原爆を積んで広島・長崎に向かってかつて爆撃機が飛び立った、テニアン島の飛行場跡で旅は終わります。

本書の副題は「教わらなかった歴史と出会う旅」。
そう、かつてこの国がこんなにも広大な地域に版図を広げ、多くの日本人が移住し、現地に功罪両面の痕跡を残し、痛ましい戦禍とともに散っていったという事実を、我々はまったく教わることなく、あまりに知らな過ぎる。
その事実から何を感じるかは人それぞれにしても、歴史を直視しないのはあまりに勿体無いことのように思います。
コメント
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