仕事に効く教養としての「世界史」 | |
出口治明 | |
祥伝社 |
Kindle版にて読了。
ライフネット生命社長の出口さんの著作。
タイトルに「教養としての」とあるが、出口さんの教養の深さには驚かされる。
なんとこの本も参考文献に頼ることなく、これまでに見たり聴いたり読んだりして、ご自身で咀嚼して腹落ちしたことをまとめて書いたものだとのこと。
これこそが本当の「教養」だよな、と思う。
広く深い理解のもとに書かれているだけに、単なる「知識」のレベルを超越して、「史観」の領域にまで達している。
例えば、「文字はどの文明でも発明されるが、その文字を何に書いたかということが実は大きい」と。
紙のように長く残るものに文字を書いた文明では、歴史が後世に残ることが予想できるがために、君主の行動が変わる。
いい政治をしようとする、と。
そんな視点で歴史を眺めたことなどこれまでに全くなかったので、まさに目から鱗。
宗教・思想を軸に中国史と西洋史を俯瞰し、そしてそれらにまたがるユーラシアの大きな流れを遊牧民による侵攻という縦糸で貫いていく。
こういう大きく大きく引いた視野で歴史を眺めれば、西洋中心主義の歴史教育も相対化されていく。
出口さんの史観にのみ読者が染まることは本意ではないのだろうけれど、繰り返し読んで理解を深めていきたい気にならされる一冊であります。