なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか ルールメーキング論入門 (ディスカヴァー携書) | |
青木高夫 | |
ディスカヴァー・トゥエンティワン |
Kindle版にて読了。
HONDAの社員として通商・税制などの業界ルール作りに携わってきた著者が、国際社会における「ルール」に対する欧米人・日本人の態度や考え方について論じた一冊。
論考のポイントなるのは「ルール」と「プリンシプル」の違い。
「ルール」は、考え方の違う人・組織の間の”決めごと”であり、状況に応じて変えるもの、他律的なもの。
「プリンシプル」は、考え方の同じ人や組織の中に発生し、状況に左右されず、自律的なもの。
兎角日本人はルールは不変なもの、守るべきものと捉えがちだが、実はその考え方自体が日本人の間でしか通用しないプリンシプルであり、異なるプリンシプルを有する外国人に押し付けるべきではない、と。
一方で、スポーツ界やビジネスの世界で、日本人からみると不当に感じられるルール変更を欧米から押し付けられた数々の事例を振り返りながら、「そのルール変更が何をもたらしたのか」を紐解いていくと、我田引水なルール変更はルールを押し付けた側に必ずしも成功をもたらしていないことを指摘していきます。
日本人は、もっと積極的にルール作りに参加するべきである、と。
そしてルール作りに参画する目的は、けっして自己の利益をゴリ押しすることにあるのではなく、「社益」と「公益」のバランスを取ることが肝要である、と。
よく言われる「目線を高くする」とは、このことを指すんですよね。
「あとがき」において、ルールとプリンシプルを語る事例として憲法改正論議が挙げられているのはなかなか興味深かった。
改憲論者も護憲論者も、ルールを変えるとプリンシプルが変わるという視点で語っているのは共通のように思う。
本当は、様々な内外の環境変化から「プリンシプルを変える」ことへの要請が高まりつつあることの方が本質で、その逆ではないと思うんですがね。