暗渠の宿 | |
西村 賢太 | |
新潮社 |
平時モードに戻りつつある中、読書記も再開しようと思います。
3月11日、ちょうど地震が発生する直前に読了した一冊。
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芥川賞受賞をきっかけに、著者の小説を初めて読みました。
いやあ面白い。
私小説を超えて、ほとんど回想録みたいだ(笑)。
「けがれなき酒のへど」は恋人欲しさの一心で風俗嬢にアプローチをかけ続け、手痛い失敗を喰らうエピソード。
「暗渠の宿」は、ついてに手に入れた恋人に対して、身勝手な支配欲を抑えられなくなっていく自己嫌悪に満ちた記録。
その姿を嗤い非難することは簡単だけど、男ならどこか共感せざるを得ない煩悩が赤裸々に映じられているがゆえに、読んでいて微かな胸の痛みを感じるような。
この率直さは貴重です。