そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『まく子』 西加奈子

2016-08-17 22:30:46 | Books
まく子 (福音館の単行本)
西加奈子
福音館書店


『サラバ!』で直木賞作家となった西加奈子の新作。

『サラバ!』の壮大な物語世界に比べると、住民全員が顔見知りのような温泉旅館集落というこじんまりとした共同体が舞台になっているが、それでもスケールの大きな読後感を憶える快作。

『まく子』は「捲く」子のことだ。
「捲く」という行為の豪快さが華々しいイメージを喚起する。

狭い共同体世界に、謎めく美少女という異分子がが加わることで掻き乱れていく様が魅力的に描かれる。
『サラバ!』にも通じる、子供の目に映る世界が生き生きと構築され、体の変化とともに異性に対する好悪の関心に囚われる思春期の感性が重なり、ノスタルジーを刺激するあたりは西加奈子の真骨頂。

ただ、思春期の男子が、大人を汚く感じ、大人になりたくないと思う心理にはリアリティを感じなかった。
男子ってそういう生き物ではない。
自分が書いた『サラバ!』のレビューを見返すと、
どこか「女流作家が描いた男性像」を脱しきれていない
とあるが、同じことを感じる。

クライマックスはSF色も加わり、大風呂敷を広げた印象だが、それを畳みきれない粗削りさも含め、快作と思う。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 生前退位の考察 | トップ | 大銀星 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Books」カテゴリの最新記事