幕末・維新―シリーズ日本近現代史〈1〉 (岩波新書)井上 勝生岩波書店このアイテムの詳細を見る |
岩波新書「シリーズ日本近現代史」の1巻目。
先に5巻目の「満州事変から日中戦争へ」を読んだんですが、時代を遡って読み返してみようと思ったわけです。
かつて学生時代に日本史を学んだ際、この幕末、明治維新の時代は理解しにくいところがあった印象が残っています。
何がわかりにくかったかというと、薩摩・長州など西南雄藩の動き。
藩独自で外国と貿易などしていたかと思うと、尊王攘夷に転じ、明治維新が成ると一転開明的な政策の中心となる。
薩摩も長州も互いに敵として戦ったかと思うと、突如手を結ぶ。
このあたりに二転三転に頭が付いていかなかったりしました。
で、この本を読んで改めて学んでみると、攘夷だ開国だというイデオロギーなど本質ではなく、単なる権力闘争の道具だったのだな、ということが今更ながらよくわかりました。
大きな流れで言うと、彼らは徳川幕府を倒すことを目的に、天皇・朝廷や外敵の存在を利用していただけなんですね。
今の小沢一郎や鳩山由起夫がやってることとまったく変わらんなあ、という気がしました。
さて、作者の井上勝生氏は、この時代の政治・経済・社会史を概観しながら、つい最近まで常識として人口に膾炙していた「未開で弱腰の徳川幕府時代」「開明的な維新政府」という史観や、大日本帝国時代に支配的だった皇国史観が、維新政府によって「作り上げられた」ものであることを明らかにすることに注力しています。
例えば、「天皇家は万世一系」という考え方や紀元節・天長節などもこの時代に「新設」されたものであることなどが紹介されています。
その他、この時代の民衆社会がかなり成熟したものであったことなども紙面を割いて解説されており、こういった点は新鮮な知識として得ることができました。