そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『水曜日の凱歌』 乃南アサ

2016-02-28 22:16:16 | Books
水曜日の凱歌
乃南 アサ
新潮社


3月の大空襲で全てを焼かれて家族や友人を殺され、町には焦げた焼死体が至る所に放置される状況の中を彷徨う。
それが僅か5ヶ月後、半年も経たないうちに戦争は終わり、仇敵であったはずの米兵たちが支配者として身近に登場し、鬼畜であったはずの彼らに群がる日本人たちが大勢現れる。
この壮絶なパラダイムの転換。
これまでにも散々聞かされてきた話ではあるが、こうして小説世界として時系列に疑似体験してみると、改めて竦然たる気持ちになる。
それを噛み締めさせてくれただけでも、この小説には読む価値があった。

女性作家による、女性視点での物語である。
男性である自分が、本当の意味でこの小説に込められた想いを理解できたとは到底思えないが、兎角政治問題としてしか語られない慰安婦という存在が、哀しくも逞しく生きる様を体現しているということは分かった。

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