物理学者が、国交省がダム建設の根拠として便利に使う貯留関数法は科学ではなく「魔術」であると断言している。国交省の資料によれば、例えば八ッ多場ダムの建設される吾妻川流域では、過去最大洪水から求めた場合K=35.2、P=0.3であるのに対し、過去の中規模洪水から求めた場合K=14.8、P=0.64と全く違った値になる。 対象洪水の取り方で2倍も数値変わるような値を「定数」と呼ぶことが可能であろうか。その上、冨永論文にある貯留関数法が有意味になるためのKとPの関係性は満たしていない。八ッ場ダム建設のためにダムの効果を大きく見せかけるためのパラメータ操作と考えると、この不可解な数値を整合的に説明可能になる。 . . . 本文を読む
岡本芳美先生の『河川管理のための流出計算法』(築地書館、2014年)。まず表紙の写真が本当にすばらしく(画像参照)、この美しい日本の河川を守らねばならないという著者の決意がひしひしと伝わってきて、身が引き締まる思いがした。
国交省がダム建設を含む河川計画を策定する際の基本モデルとしている貯留関数法に代わって、著者が40年かけて開発してきた誤差の少ない流出解析が可能なマルチ・タンク・モデル法を解説書したものが本書である。どれだけ精密かと言えば、国交省が八ッ場ダム建設の根拠とする貯留関数法モデルは利根川上流域を39分割しているのに対し、岡本先生のマルチ・タンク・モデルは利根川上流域をじつに8400分割して計算している。これまで国交省は、貯留関数法の欠陥が明らかになると自分たちが困るため、研究に予算を付けず、オルタナティブな計算手法の開発そのものを迫害し、焚書坑儒を行ってきたと。日本では、その欠陥ゆえにダム建設のための数値をねつ造するのに最適な手法であるためか、官・業・学癒着体制のもとで、その欠陥を徹底的に隠蔽し、それこそシャーマンが御宣託でも出すような大真面目な顔をして、その計算結果のみを国民に押し付けてきた。 . . . 本文を読む