代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

林産物自由貿易体制への代替案

2005年01月16日 | 自分の研究のことなど
 CIFOR(国際林業研究センター)のホームページに(アドレスは下記)、Second thoughts about free trade というタイトルで、私が共著で執筆した林産物貿易自由化批判の論文の紹介が掲載されました。CIFORのPOLEXという欄で、この欄では世界中で書かれた森林関係の論文や本(自然科学分野も社会科学分野も含む)の中から、注目すべきものを毎月一本づつ紹介しているものです。

http://www.cifor.cgiar.org/Publications/Polex/polexdetail.htm?pid=597

 元の論文は「エコロジカル・エコノミクス」(国際生態経済学会が発行する学術誌)に掲載されたもので、以下のようなものです。
Mihoko Shimamotoi, Fumikazu Ubukata, and Yoshiki Seki.(島本美保子、生方史数、関良基), 2004, "Forest Sustainability and the Free Trade of Forest Products: Cases from Southeast Asia", Ecological Economics, 50: 23-34.

 論文では、フィリピン、タイ、インドネシアの三各国を事例に、この間の林産物関税引き下げの効果を分析しました。その結果、天然材の輸入国(フィリピンとタイ)においては輸入関税の引き下げが輸入材を増加させている。国産人工材は、競争に勝てないので、新しく勃興しつつある人工材生産農家は植林インセンティブを奪われ、市場ベースでの人工造林はますます困難になっている。他方で、天然材の輸出国(インドネシア)においては違法伐採を加速しているとの結論を導きました。
 その上で、人工林を育成すべき国は輸入関税、違法伐採など天然林の資源枯渇が危惧される国は輸出関税など、貿易管理措置は持続可能な森林経営のために必要である。森林の持続的な利用のために、WTOは林産物を他の工業生産品や農産品と区別し、別格に取り扱う必要があるとの政策提言を行いました。 

 CIFORのHPでは、「この学説は、自由貿易を推進する人々から見れば異端であるが、充分に検討に値するものである」と最大限の評価をしてくれています。ご参照ください。

 何と、ホームページに掲載されてから3日のあいだに、世界中から130件以上もの問い合わせが殺到しました。今後、批判を含め、さまざまに論及されるだろうと思われ、「覚悟しなければ」と思っています。

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