先週19日から、変則火~金の帯で当地ローカル再放送が始まった『その灯は消さない』の充実度、丁寧さに軽く驚いています。
一男一女子持ちの一流会社リーマン・藤夫(昔シルバー仮面・のちレディス4柴俊夫さん)と結婚し一女をなして15年、連れ子たちにも懐かれ趣味と実益の宝飾デザインなどこなしながら一見平穏に満ち足りた生活を送る智子(坂口良子さん)、しかし再婚の夫は、長野の旧家出身で死別した先妻・かず子の実家両親と、“ひとり娘のかず子を手放す条件に、かず子が産んだ子のひとりは実家の跡取りにくれる”約束をしていたことを智子に隠しています。未亡人となって実家を守る気丈なかず子母(東恵美子さん)は藤夫がかず子の産んだ2児を連れて智子と再婚したことを、いまもひどくうらみに思っています。
智子も藤夫との結婚前は、長く付き合っていた彼氏がいた様子。
一方、OL一年生となった長女・律子(吉野真弓さん)はそろそろひとり暮らしをしてみたくひそかに物件物色中。そんなある日会社のお使いの帰途、議員ボディガードたちに追われるトップ屋フリー記者・川合(大橋吾郎さん)とすれ違いざま肩が触れて、咄嗟にスキャンダル写真のネガを託され…川合は智子の女友達でデザイン納品先である宝石店店長・弘美(ひょうきんベストテン山村美智子さん)と学生時代の知己でもあるようです。
第1話冒頭の、長野の藤夫の先妻実家での亡父葬儀の場面がいきなり重厚。実際の旧家の、高格式な葬儀の映像と、スタジオセットでの役者さんを使った映像とを重ねてつなぎ合わせたようでもあります。一歩間違えばワザトラ作り物臭さを増幅させかねないリスクをあえて冒し、信州松本という地方色を強調し東京で藤夫の帰りを待つ智子の心象との対比を際立たせる、箱庭・書割感を最小限に抑えたこういう撮り方も昼ドラでは久しぶりに見ました。
“地下水脈”を張りめぐらしたかのようなことさら複雑な人間関係設定、度重なる宝くじレベルの偶然の出会い、極端すぎる価値観や主張で類型化した人物像など、よくからかい気味に言われる“いかにも昼ドラ”ファクターも随所に散見されるものの、好感が持てるのはここ最近の同枠作品で鼻につきがちな“はなから開き直った”“セルフパロディ”の匂いが非常に希薄なことです。狙わず、大真面目に、謙虚に作っている。
この作品が本放送された96年1月期の夜の時間帯と言えば、『ピュア』と『オンリー・ユー ~愛されて~』の2大(?)“知的障害者ドラマ”が東西正横綱だった記憶が。前者はMr.チルドレン、後者はオリジナル・ラヴ田島貴男、ともにドラマより主題曲のほうが印象深い。スピッツ『白線流し』もこのクールだったか。“学校”“制服”“教師”“受験”などがメインモチーフのドラマは滅法苦手なので、これだけは1話も見なかったと思いますが、とりあえず、当然のことながら傑作良作揃いとはいかないものの、夜は夜、昼は昼で“ドラマがドラマの文法やパラダイムを信頼して作られていた”時代の、最後の最後のそのまた末尾の時期がこの頃だったかもしれない。
昼ドラも、いつからあからさまにセルフパロディをやるようになってしまったのだろう。やって悪いことはないけれど、そっちへ踏み越える前の『その灯~』のような作品を観る機会があると、もったいないと思うのです。セルフパロディをセルフパロディと認識して、「あーやってるやってる」と指さして笑うという消費のしかたが客にも浸透してしまった以上、もうビフォーには戻れない。
02年の『真珠夫人』のセンセーションがひとつの分水嶺だったような気はします。
現放送中の『花衣夢衣』は最終週、恒例・収束前のもうひとモンチャクに入ったはずなのですが、帰宅して巻き戻したら砂嵐しか録れてない(崩)。よく見たらビデオデッキの背中のアンテナ線が外れてました(慌)。物語がもうチョット盛り上がっていたらこんなミスはしなかったはずなんだけど…ってこともないか。通常デッキの背中チェックしませんもんね。今朝出がけにマッハで掃除機をかけたときにやっちまったかな。
ドラマ本編より、今日からオンエア始まるはずの次クール『白と黒』スポット番宣を録り損なったのが悔やまれますが、これは明日火曜日再挑戦。本編はネット情報で補完しようっと。終盤に入って“目が離せない人間関係ベクトル”が和美(萩尾みどりさん)と愛人ジュニア俊彦(吉岡毅志さん)の結末しかないので、この程度の情報量でちょうどいいのでした。