七夕の前日・7月6日(金)の『あさイチ』プレミアムトークゲストに小栗旬さん。スタジオ登場シーンで、思っていたよりずっと長身なのに驚きました。184センチだそうです。この番組で、MC井ノッチより背の高いゲストは、実はかなり珍しい。
なんでかな、小栗さんて、ガタイの外枠イメージが成宮寛貴さん、小池徹平さん辺りとなぜかかぶっていて、実際よりずっと小柄に考えていたんですね。たいへん失礼をば。“生徒役”のイメージが刷り込まれているせいかもしれない。リアル高校生の年代で高校生を演じていた頃よりは実身長もぐぐっと伸びているのではないでしょうか。
気がつけばもう今年の暮れには三十路に入るアラサー。“若手”俳優とか“イケメン”俳優とかカンムリ付けるのはそれこそ失礼なポジションとキャリアをお持ちですが、小栗さんが、たとえば教室シーンでも目を引くカッコよさの若手として認知度を高めてきた2000~2002年頃は、エンタメ界が “イケメンブーム”とでもいったものでふつふつと地熱が上昇していて、月河の長年のレギュラー講読雑誌『TVBros.』には巻末ぴぴぴクラブの後に、の若手イケメンくんを写真とインタビューつきで紹介する“あらま美形”なんていう噴飯タイトルのコーナーもありました。ドラマであれCMであれ、「どこかにかっこいい子いない?」「いたいた、ほらあの人は何ていう人?」みたいな視線を常時含んでウォッチされていた時期です。
月河の中では漠然と“特撮系”と“学園系”に彼らを分けていて、実際、特撮ヒーローと学園ものがフレッシュイケメンの2大宝庫だったのですが、ここで何度も書いている通り月河は学園ドラマというジャンルがとことん苦手で忌避しているため、たとえば『ごくせん』のチョイ役からオーディションを経て『仮面ライダー』へ…というルートで“こっち”へ来てくれない限り、“あら美”で顔と名前を知ったとしても、知った止まりでそれ以上深追いしようがありませんでした。
小栗さんは最後まで“こっち”に来ないままの人でした。
そしてイケメンブームの地熱が醒めてもしっかり生き残った1人です。もう“イケメンである必要はない”役でもちゃんとこなし、なおかつイケメンであることを活かして演じ切る。イケメンブームの支え手であった女性客の中でも「とにかくイケメンあるのみ」という趣味志向の、おもに中高年層は2004年の冬ソナブーム以降大半韓流に行ってしまい、イケメンであること以外特段の売りを持たない日本人俳優さんは当然のように露出機会が激減しましたが、小栗さんはイケメンはイケメンでもそのイケメン度合いがちょうど手ごろだったのが生き残った決め手かもしれない。“小栗旬”という商品の価値全体を100とすると、その中で“イケメン”の占める割合が50を超えるか超えないかのところでとどまっている感じなのです。美形だけれど、ほどほど生活感があって、地上的というかね。笑ったときのつっぱったようなアゴのラインが、会社で言えば庶務課とか、業務管理課とか、内勤っぽい。
長年付き合っているマネージャーさんの“小栗旬トリセツ”によれば、「朝の寝起きだけ別人。あとはぜんぶ長所」だそうで、AM8:15~の『あさイチ』では特にテンション低めだったのかもしれませんが、満29歳という年齢以上にクールでハシャギ少なく見えたのは、お父さんが国際的オペラ監督、お母さんがバレエ教師という、もともと芸能色の強い生まれ育ちも大きいようです。なんか若手の頃から場慣れというか、芸能人として振る舞うことに慣れている、ガツガツしてない空気がありましたね。
コメントVTRで登場の蜷川幸雄さんが「最近(役者として)よくないね。たやすい、くみしやすいところとばかり仕事してる」「ちょっと男前、ちょっと賢そう、ちょっとワル、ちょっといい人、何でも“ちょっと”“ちょっと”なのが物足りない」「もっと落ちるところまで落ちて、泥水に顔ツッコむくらいになったら、また一緒に仕事しよう」と楽しそうにダメ出しエールをくれていましたが、蜷川さんのような燃え型演出家に“堕ちていくところを見たい”と思わせるのは役者冥利に尽きるじゃないですか。平凡な小市民性と狂気を兼ねそなえた、プーシキン『スペードの女王』のゲルマンとかドストエフスキー『悪霊』のスタヴローギンなど演ってほしいですね。『白痴』ならムィシュキン公爵じゃなくラゴージンのほう。ハイスミス『太陽がいっぱい』以降のトム・リプリーシリーズも似合いそう。
…しかし、その前に、一度は特撮に来てほしかったなぁ。『仮面ライダーカブト』で徳山秀典さんが演じたやさぐれ兄貴なんかぴったりだったのに。『超星神グランセイザー』の軟派なファッションデザイナー=セイザーダイルもいいな。ルックスが良くてキャラの立つ俳優さんには月河、一度は「変身!」とか「装着!」とか言わせてポーズとらせてみたいんですよね。