イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

花言葉は“危険な愛”

2008-07-02 21:47:31 | バラエティ番組

昨夜、後片付け中の背後からいきなり『花衣夢衣』BGMが聞こえてきたので、ナニゴトかと思ったら、高齢家族視聴中の『開運!なんでも鑑定団』でお宝紹介のVTRのバックに流れていたのでした。俳諧の始祖・山崎宗鑑の歌集。“和”ではあるけれど。アシスタントMCはもちろん吉田真由子さん。狙いましたなテレビ東京。

“澪”じゃない、洋服姿は初めて見た気がする吉田さん、脚がスーパー細い。て言うか全体的に細い。事故シーンの撮影でたぶん吊られてジャンプしたと思いますが、あの体型なら『リゴレット』じゃないけど風の中の羽根のように跳んだだろうな。

『花衣夢衣』の音楽はもちろん昨年10月期『愛の迷宮』のコーニッシュさんです。『~迷宮』のそれに比べるとずいぶん“旋律”が潤沢になり彩度を増した感はあり、その意味で音楽としては良作と言ってもいいと思うのですが、ドラマ劇中で流れたとき、どのフレーズであれ10回に7回は「…大袈裟」と思えてしまった。シリアスな場面なのに音楽がかぶった瞬間笑ってしまったことも。

これは決して曲の瑕疵や、作曲者の落ち度ではありません。シリアスな場面ならシリアスに見せ、“和”な情感を強調した場面なら和らしく見せるべきドラマ本編の作りと、どのシーンでどの曲のどのフレーズを流すかを決める調整センスの問題なのですが、劇伴音楽はドラマなり映画なり“劇本体”と一蓮托生ですから、「大袈裟」と思われた時点で、残念ながら致命傷と言わざるを得ない。作曲コーニッシュさんが原作や企画書から着想しふくらませて可聴化してくれたイメージほど、ドラマ本編のほうがシリアスにもドラマティックにもならなかった。

もう時効になったことをむし返すようで我ながら人が悪いなぁと思いますが、昨年の『華麗なる一族』の服部隆之さんの音楽などはその典型と言えるでしょう。ドラマはどう考えても“カネのかかったおままごと”サイズなのに、音楽だけ独走で本格派。空回り。こうなると「ドラマはアレだったけど音楽はよかったからサントラだけ買うか」ともいきません。

『花衣夢衣』に関してフォローすれば、本編の衣装、美術などヴィジュアル方面に関してと同様、“和”方面の造詣が深く“和”が生活に密着した人生を送ってきた人なら、和楽器を全面フィーチャーした音楽が、音楽単体としてそれなりに味わえたかもしれません。

「“和”だからシンパシーを感じる」「“和”だから情感豊か」「“和”だからハイグレード」「“和”だから色っぽい」…などの感性回路をまったく持ち合わせていない月河にとっては、音楽も終始「こんな人物がこの程度の状況で、何をそんなにオーバーに愁嘆入ってんだ」という体温差がつきまといました。

 放送中の『白と黒』には、まだ始まって日が浅いこともありさしたる不満もありませんが、本当に無理やり強いて言えばふたつ。

ひとつはヒロイン・礼子(西原亜希さん)が“悩”“疑”モードなのをかしらに、主要人物が軒並み重めで暗め、何か秘めていそうなこと。

もうひとつは“謎のタネ”の初回からのばら撒かれ方が、量質ともに若干過剰

礼子目線で強調されている一葉(大村彩子さん)の真意、“礼子への殺意=未必の故意あり?”はほんの一郭で、ざっと振り返っても研究所を狙う自称資金提供のブローカー、妻亡き後20年以上独身を通す所長の愛蔵するどこぞの婦人の肖像、研究所で分析中の異常に毒性の強い夾竹桃(きょうちくとう)、その自生地を無償提供している地元農家、メガネの男女若手所員同士の気にかけ合い、研究所と私邸を兼ねる桐生家の、材木商だった前所有者が建てたという倉庫に地下室、海外放浪から帰国後四年間音信不通だったらしい聖人(佐藤智仁さん)の失踪中の動向、そして礼子を幼いとき養女に出した実母の行方…。“項目”数の多さもさることながら、提示のされ方がその都度「さぁ謎のタネ、伏線の糸口いまから埋設しますよ、いいですねハイッ」と振ってから提示するような語り口で、しかもまだたった2話なのに、矢継ぎ早に詰め込む詰め込む。

伏線ってのは、気がつかないうちにサラッと埋められて、回収されるときに初めて「あぁそうだった、それがあった」と思い出され驚きとともに膝を打つインパクトがあってこそ。撒かれる時点で「これは何かの伏線になりそうだな」と観客の脳内で警報が鳴るようでは、周到ではあるかもしれないが、あまり垢抜けた埋設工事とは言えない。

むしろ、特別本筋に関係なさそうななにげないワンカットに、このドラマの洗練度高さが垣間見える。昨日(71日)放送の第2話では、章吾(小林且弥さん)へのランチボックスを一葉に託した後、箸箱を届けるのに事寄せてひそかに追いかけてきたギプス松葉杖の礼子が、グリーンハウスのガラス窓越しに見る一葉の赤い影が良かった。

この前のシーンでは一葉の赤いニットカーディガン、特別派手でもわざとらしくもない、若い女性が普通に着るものに見えたのですが、負傷で身体が思うようにならない上、「誰も私に本当のことを、求める答えを言ってくれない」という焦燥を抱えた礼子の心理が、曇りガラス越しだからこそ映し出せた。礼子には、婚約者の背後に房を揺らす魔性の花に見えたかもしれません。

礼子のこうした疑心暗鬼は、実両親と縁が薄く血縁家族の味を知らずに育った経歴がそうさせるのかもしれませんが、悩んで考えて繰り出す探り方の方法論がいかにも陰性で、視聴者が気を沿わせていくのがちょっとむつかしいかも。

3話では、4年ぶりにいきなり帰宅したものの家の中では放蕩息子扱いで逆風な聖人をめぐる空気を目の前に、事故時助けてくれたのはこの人ですと章吾にも桐生所長(山本圭さん)にも告げられない礼子、告げられない礼子を目の前に、あの時アンタを助けたよな?とみずからも言い出さない聖人、暗黙のうち、当人同士無意識のうちに阿吽の呼吸が生まれているのがおもしろかった。一葉の反応を見ようとして、わざと一葉が昔章吾に贈った手刺繍のタオルを持ち出した礼子を庇う聖人のくだりは、樋口一葉『大つごもり』みたいでしたが、聖人はすでに礼子が章吾と一葉の仲を疑っていると察しているだけに、恩を売る気が多少あるのでしょうね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あんた、おもしろいな | トップ | 移りゆく季節の風に »

コメントを投稿

バラエティ番組」カテゴリの最新記事